NTTデータと野村総合研究所(NRI)は2011年2月28日、ITサービス産業の活性化を目的に「ITと新社会デザインフォーラム2011」と題するイベントを共同開催した。昨年2月の第1回(関連記事)に続く、2回目の開催。今回も「日本が変わる。ITが創る。」をテーマに、具体的なビジネス領域開拓や人材育成の施策に話が及んだ。

技術者の輝きを取り戻す

写真1●開会あいさつに立ったNTTデータの山下徹社長
写真1●開会あいさつに立ったNTTデータの山下徹社長
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 イベントの冒頭、あいさつに立ったNTTデータの山下徹社長はNRIと共有する日本IT業界の課題を三つ挙げた(写真1)。一つめは社会レベルの課題。「少子高齢化といった日本が直面する問題解決にITが貢献できるはずにもかかわらず、その期待に応えていない」と山下社長は語る。

 二つめは業界レベルの課題。インドや中国と競争するなかで、仕事のスタイルを積極的に提案する知識集約型に変えていくべきなのに、旧態依然として受身な労働集約型のままとみる。

 三つめの課題は、技術者の社会的地位が低いままであり、やりがいを欠いていることだ。「私や(NRI会長の)藤沼(彰久)さんがIT業界に入った時代は今よりももっと労働環境が悪かった。それでも今よりも技術者は光り輝き、顧客から評価され、時代の先端を行き、やりがいがあった」と山下社長は振り返る。

 だが「今は3K、14Kと『K』の略語が思いつかないぐらいまで技術者は惨めな評価を受けている」と山下社長は続ける。この課題は単に労働時間を短縮するとか労働条件を改善するとかでは解決しないという。「社会的に認められて地位を回復するためにも、社会課題をITで解決することが必要で、併せて(高付加価値の仕事をしてユーザーに評価してもらうためにも)仕事のスタイルを知識集約型に変えることが欠かせない」とする。

 これらの課題をベースにNTTデータとNRIは昨年の第1回フォーラムで二つの提言を打ち出した。社会課題を解決するために、住民にゆとりと自由と与え、雇用や活力をもたらせるようにITの“つなぐ”特性をフルに活かした「創造性豊かな都市の構築」と、ビジネスや社会とITとを橋渡しできる新しい人材である「システムアーキテクトの育成」である。「こうした提言は前例がなく、自信満々というものではなかったが、(提言を)出してみると多くの好意を持って受け入れてもらえた」と山下社長はみている。