IPv4アドレスのIANA(Internet Assigned Numbers Authority)における中央在庫が枯渇したのは、米国時間2011年2月3日(日本時間の同深夜)。まさにその2月3日に、IPv6普及・高度化推進協議会は東京都内でイベント「Global IP Business Exchange 2011」(IP-BizX)を開催した。

 中央在庫の枯渇が目前に迫っていたことから、ここでもIPv4アドレス枯渇問題は大きな話題となった。NTT東日本とNTT西日本が提供するNGNのサービス「フレッツ 光ネクスト」を用いたIPv6インターネット接続サービスについても、開始時期が迫っていることから関連セッションが設けられた。

枯渇対策は必要だが長く続けるべきではない

写真1●IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入に向けた取り組みを説明するNTTコミュニケーションズの宮川晋氏
写真1●IPv4アドレス枯渇対策とIPv6導入に向けた取り組みを説明するNTTコミュニケーションズの宮川晋氏
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 今回は、NTTコミュニケーションズの宮川晋氏による「IPv4枯渇への対策とIPv6導入に向けた取り組みについて」と題した特別講演が設けられた(写真1)。

 同氏はまず、IPv4枯渇対策としてプロバイダーのネットワーク内でNATを実施するLSN(Large Scale NAT)を取り上げ、その課題を指摘した。例えば、「(グローバルIPv4アドレスを複数ユーザーで共有するため)悪意あるユーザーを排除しようとフィルタリングルールを設定すると、ほかのユーザーも影響を受ける」「ログはアドレスだけではなく、ポートまで記録しなくてはいけなくなる」「1ユーザーに許可するセッション数によっては、地図サイトの表示が欠けたり表示できなかったりする」などの事象が起こり得るのだという。

 そしてIPv4の延命策だけをやり続けていると際限なくコストがかさみ、セキュリティの問題もあるとも説明した。「延命策は最後のときが来るのを先延ばしているだけ。10年程度延ばせれば御の字だろう。全体をIPv6に速やかに移行したほうが低コストで済む。IPv4のことも忘れず考えなくてはならないが、スムースにIPv6に移行していくべき」(宮川氏)。

 また宮川氏は、フレッツ 光ネクスト上で提供するIPv6インターネット接続サービスに関するNTTコミュニケーションズの取り組みを説明した。現時点で同社は、「トンネル方式」でサービスを提供する意向を表明済み。宮川氏は、トンネル方式の接続に必要な「アダプタ」を開発していることを紹介した。

 アダプタは、NGNの中のIPv6サービスに向かっていくトラフィックのプレフィックスにNATを実施する「NAT66」、マルチキャスト通信はすべてNGN側に向ける「MLD Proxy」、配下のPCに対してDNSサーバーとして機能し、アクセス先ドメインを見てNGN内のDNSサーバーまたはIPv6インターネットのDNSサーバーの適切なほうへアクセスする「DNS Proxy」、プロバイダー側にはルーター接続でNGN側にはブリッジ接続しているようにみせる「NDP Proxy」などの機能を搭載する。1年以上かけて開発しており、一つのプロバイダーに相当する検証用ネットワーク環境を用意してあるという。