物流在庫管理のクラウドサービスを提供するロジザード。Magaseekなどの大手アパレルサイトや、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど大手モールで受賞されている有名ネットショップなど、約350社のアパレルショップが同社の「LOGIZARD-PLUS」を利用している。同システムが管理する荷物の数は、年間1100万個に上る。(ITpro編集部)

画面●LOGIZARD-PLUS
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 「LOGIZARD-PLUS」を始める前のロジザードは、パッケージをベースにした受託開発ビジネスが中心でした。大企業を顧客とした高額な受注案件は競争が厳しいため、安定した受注が取れず業績の波が激しいというのが当時の課題でした。そこで、小規模な物流企業に高品質な物流ITを安く提供したらきっと多くの事業者が利用してくれて、業績の波の大きさという課題を技術的観点からも構造変革できると確信しASP(クラウド)事業を構想したのです。

 物流システムの開発では当時から20年以上の経験とノウハウがあったので、市場ニーズは必ず存在するという自信はありました。物流業務は「入庫したら加算」「出庫したら減算」「残高はいくら」というように本質はシンプルな業務です。しかし、棚卸しで在庫残高が1億円(平均単価1000円の商品、個数で10万個)の企業では棚卸しで在庫差異が0.1%(金額で10万円、個数で100個)は必ずあります。在庫差異が1%(100万円、1000個)になる企業も普通に存在する業界です。人手で毎日1000行もの伝票集計を行えば一定の確率でヒューマンエラーが発生するは当然で、ITが役に立つ余地が十分にあると見ていたのです。

事業開始当初の事業計画

 当初の事業計画は非常にシンプルなものでした。「月額利用料金は5万円と革新的に低価格なので、毎月10社は契約を獲得できる」「サーバーが安くなってきたので、1台のサーバーに30ユーザーを入れる」「毎月150万円の売り上げに、概算で1サーバー当たり月に50万円くらいのコストで回るはず。粗利100万円」というものでした。実際にはこの事業計画の数値は大きく下振れしましたが、今でも私はクラウド事業のKPIの設定はこれぐらいシンプルであるべきだと思います。シンプルに考えたからこそ、ソフトウェアベンダーとして古いビジネスモデルから新しいビジネスモデルへの変革ができたのだと思うからです。

立ち上げ初期のつまずき

 2001年にクラウド事業を始めましたが、毎月10件の顧客を獲得できると想定して始めた初年度のユーザー数はたったの3社。翌2002年も10件ほどしか顧客が増えないという散々な結果に終わりました。

 性能だけは全く問題なかったのだけが救いで、顧客から「インターネット越しに使っていると思えない」と好感触を得ました。しかし、良いシステムを作ることと、そのシステムが売れるかどうかは全く違う話です。

 当初の敗因を分析すると、下記のようなものがあったと思います。

・インターネットに対するユーザーの不安
・顧客のITリテラシー不足(Yahoo!、何それ?)
・機能の不足(ユーザーの多様性に追いつかず)
・体制の不備(要員数の不足)
・当時の通信回線が、情報首都高速(無い、遅い、高い)状態

 特に、2001年当時は、光回線はもちろんADSL回線も普及していなかったことが苦戦を強いられた大きな原因でした。ASP事業を始めた同業者は2000年前後には多かったのですが、その多くが消えていきました。顧客の通信環境までも深く研究していなかったからです。しかも、物流在庫管理システムの主な利用場所は倉庫なのですが、物流倉庫は比較的辺ぴな場所にあり、都市以上に通信環境が悪かったのです。