SaaS関連は合計で200件の有効回答が寄せられた。用途によって求める信頼性やサポートレベルに違いがあるため、前回と同じく(1)汎用業務系(会計、人事、営業支援など)、(2)汎用情報系(グループウエア、eラーニング、Web会議など)、(3)特定業種業務向けの三つに分けてベストサービスを選定した。

 3部門で14社16サービスをベストサービスに選んだ(図4)。

図4●SaaS 3部門のベストサービス
図4●SaaS 3部門のベストサービス
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 汎用業務系SaaSではセールスフォース・ドットコム、ネットスイート、日本オラクル、日本マイクロソフトの4社のサービスが挙がった。セールスフォースとオラクルは前回に続く認定である。

Web会議は国産ベンダー

 汎用情報系SaaSのベストサービスにはグループウエア関連を4サービス、Web会議関連を2サービス、eラーニング関連を1サービス選んだ。このうち4サービスは初選出で、顔ぶれが大きく変わった。

 グループウエアは日本マイクロソフトとグーグルのサービスが前回に続いて認定を受けた。ここにソーシャルグループウェアとIIJのサービスが加わった。

 Web会議のベストサービスはいずれも初顔だった。ソフトバンクテレコムと新日鉄ソリューションズのサービスを選んだ。

 eラーニングのベストサービスには、前回に続いてネットラーニングのサービスを選出した。

 特定業種業務向けSaaSでは、TDCソフトウェアエンジニアリングとライトナウ・テクノロジーズのサービスを前回に続いてベストサービスに選出した。ここに日本ユニシスのサービスと、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の2サービスが加わった。

サービス停止の定義は様々

図5●SaaSのサービスレベルの相場
図5●SaaSのサービスレベルの相場
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 調査ではあまり知られていないサービスレベルの相場も明らかになった(図5)。

 一例を挙げると、「サービス停止とみなす処理途絶時間」がサービスによって大きく異なることがわかった。多数派は「5分未満」と厳しく規定するサービスと、反対に「特に規定はない」とするサービスである。いずれも200件中34件だった。

 各ベンダーが声高にアピールする「保証するサービス稼働率」も「99.95%以上」が200件中20件、「99.9%以上」が25件ある一方で、「特に規定はない(保証なし)」との回答が22件あった。

 さらに問題なのは、これら二つ設問に対しては、「非公開」との回答がそれぞれ4割ほどあったことだ。不特定多数の利用を前提とするSaaSを提供する上で、サービスレベルを明らかにしないのは理解に苦しむ。情報公開が進まない状況では、ユーザーの導入検討は進まない。ベンダー各社には方針転換が求められる。

SaaS 3部門の調査内容
 SaaS 3部門の調査項目は合計33。各項目は(1)サービス内容、(2)カスタマイズ関連、(3)料金関連、(4)契約関連、(5)信頼性関連、(6)保守サポート関連、(7)運用・セキュリティ関連、(8)実績関連の8分野に分かれる。
 調査結果は「クラウドらしさ」と「既存システムからの移行のしやすさ」を重視して評価した。カスタマイズの自由度と手軽さ、柔軟で明確な料金体系、信頼性、サポートの手厚さ、データ保護への取り組み、実績、情報公開度などを重くみた。
 全体で100点満点となるように配点し、平均値が50、標準偏差が10となるように標準化して総合スコアを算出した。総合スコアが65以上だったサービスを「ベストサービス」として認定した。
【調査項目】
(1)サービス内容(3点)
 サービスの基本タイプ、サービスの種類、サービスの内容、利用可能なクライアント種別
(2)カスタマイズ関連(22点)
 画面のカスタマイズ方法、業務ロジックの設計・構築方法、データベースの設計・構築方法、他システムとの連携方法、導入支援やカスタマイズを実施する国内での認定パートナー企業数、業務パターンなどを設定済みのテンプレート数
(3)料金関連(7点)
 初期費用、期間以外の利用料金の変動要因、期間による課金単位
(4)契約関連(20点)
 利用開始時の申し込み方法、設定変更時の指示方法、最低契約期間、利用開始までの期間、設定変更にかかる期間
(5)信頼性関連(14点)
 保証するサービス稼働率、サービス停止とみなす処理途絶時間、計画停止の通知時期、障害・災害発生時の通知方法
(6)保守サポート関連(14点)
 サポート時間、サポート受け付け方法、データのバックアップ間隔、バックアップデータの保持期間、システムログの開示
(7)運用・セキュリティ関連(12点)
 外部機関によるセキュリティ監査・認証、ユーザーデータの保証、契約終了時のデータ返却、国内データセンターの指定
(8)実績関連(8点)
 日本国内における法人ユーザー数、全世界における法人ユーザー数