経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、ビジネスやアプリケーションの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。オラクルが主張する「IT基盤のあるべき姿」と、そのためのテクノロジーに続き、次世代IT基盤の価値を最大化する組織能力に関するオラクルの考えを紹介する。(ITpro)

 これまでに、「次世代IT基盤のあるべき姿」と「次世代IT基盤を支えるテクノロジー」について提案した。今回は、次世代IT基盤が持つ価値を最大化するための組織能力について考えてみたい。

変革に必要なリソースを最小化し、現実的に変革を推進する

 昨今の景気の低迷、通貨や原料価格の変動、急激な新興国の台頭といった外部環境が大きく変動する中、企業が競争力を維持するためには「変化対応力」の具備が重要だと、第1回で述べた。ここでいう企業の「変化対応」とは、ヒト・モノ・カネ・時間に代表される自社リソースを、外部環境の変化に追随して再配分もしくは、それらリソースの振る舞いを変革することであり、そのような変革を通じて、外部環境を自ら率先して変革することである。

 しかし、企業が変革を実践するには、ヒト、モノ、カネ、時間といったリソースがあることが前提になる。これら、変革に必要なリソースを最小化し、現実的に変革を推進できる能力こそが、本当の意味での「変化対応力」なのだ。

 変革に必要なリソースの中でも、昨今、特に重要性が増しているのが“時間”というリソースだろう。すなわち、変化の激しい現代の市場環境においては、スピードを重視した「変化対応力」が、競争優位を維持するためには絶対必要な条件になっている。

 一般に、ヒト、モノ、カネというリソースの投入可能量は企業の大小によって異なる。しかし、“時間”というリソースは万人に公平に与えられている。
 
 新事業や新製品の市場展開、不採算な事業や商品/サービスの撤退、M&A、業務オペレーションの変革なども、時間をかければ誰でもが実践できる。だが、その間に「変化対応力」を具備したスピード重視の企業(Leader戦略を採る企業)に市場を占有されてしまう。たとえ自社が先行して市場に進出できたとしても、「変化対応力」を持った後続企業(Follower戦略を採る企業)にすぐに追い着き追い越されてしまうだろう。

 ITがコモディティになり、業務領域全体にまで浸透した今、企業変革の実現にITは不可欠になった。加えて、そのIT自体にも環境変化に応じて、“時間”というリソースを最小化したスピード重視の変革が求められている。しかも求められる変革は、拡張だけではなく、縮小の選択を迫られることもある。すべてが不安定な現代においては、ビジネスもITも拡張だけを考えれば良いわけではないからだ。

 昨今、話題になっているクラウドコンピューティングの特性の一つに「Elasticity (弾力性)」というキーワードが挙げられるのも、スピード重視の拡張と縮小の両面に対応できる「変化対応力」の要請を象徴したものだろう。

「変化対応力」のための最重要要素は「情報」と「情報活用能力」

 では、企業が組織として「変化対応力」を具備し、その企業変革をITが支え、さらにはIT自体も「変化対応力」を具備するためには何が重要だろうか。筆者は、「変化対応力」を具現化するために最も重要な要素として、「情報」と「情報活用能力」を掲げたい。

 「情報」は、IT (情報とテクノロジー)という用語を構成する一つの要素である。そして「情報活用能力」とは、情報を捕捉・蓄積・生成・加工・周知するだけではなく、情報を正しく維持し、定義された情報を守り、定義された内容を実践するまでの能力として広義に扱う。この能力は、ITを構成するもう一方の要素であるテクノロジーの能力と、個人や組織の情報を活用する能力で構成されると考える。