写真●「オープンソースカンファレンス2010.Government」のパネルディスカッションの様子
写真●「オープンソースカンファレンス2010.Government」のパネルディスカッションの様子
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 「オープンソースと政府・自治体」をテーマにしたイベントが、東京都日野市の明星大学で2010年9月10日・11日に開催された。オープンソースソフトウエア(OSS)を導入した自治体が、導入の効果や課題について講演、議論を交わした。

 イベントの名称は「オープンソースカンファレンス(OSC)2010.Government」。OSS関連コミュニティが日本各地で開催しているOSCのテーマイベントとして企画された。「政府や自治体のIT予算削減要求が高まっており、その手段としてOSSが注目されている」とOSC実行委員の宮原徹氏は開催の動機を語る。

会津若松市、塩尻市、箕面市、大館市、長崎県、徳島県などが成果報告

 会津若松市 情報政策課 目黒純氏は同市におけるオープンソースソフトウエアの活用を報告した。同市では標準オフィスソフトとしてオープンソースのOpenOffice.orgを採用しており、2008年から5年かけて市役所の全パソコン約840台のうち85%をMicrosoft OfficeからOpenOffice.orgに移行し、5年間で1500万円を削減する計画を進めている(関連記事)。

 長野県塩尻市はRubyやLinuxで構築した図書館システムを採用した。塩尻市振興公社の金子春雄研究開発マネージャーは「費用を既存システムの約半額にできたほか、修正を地元ITベンダーに発注することで雇用も創出できた」と語る(関連記事)。

 大阪府箕面市は、サポートが切れたWindows 2000搭載の中古PC 500台にLinuxを導入し、小中学校全20校で利用している(関連記事)。「シンクライアント化することで、メンテナンスがほぼ不要になった」(同市子ども支援課担当主査の那谷進氏、導入当時は総務部情報政策担当)。

 秋田県大館市は、総務課主任主事の中村芳樹氏らがOSSのIP-PBXソフト「Asterisk」を利用して、全市庁舎にIP電話を導入。ケーブルなども自前で敷設し、電話機500台とサーバーで計820万円という低コストを実現した。庁舎間の通話料金など年間400万円分も削減できた(関連記事)。

 長崎県はLinuxやPHPで開発した県庁システムをOSSとして公開。また電子申請システムなどをクラウドサービスとしてほかの自治体に提供している(関連記事)。「2001年以前には地元ベンダーへの発注はほとんどなかった。OSSを利用し、市職員が仕様書を作成して発注を500万円以下に分割することで、2009年度は電子県庁システムの96.4%の額を地元ベンダーが受注するようになった」(総務部理事の島村秀世氏、関連記事)。

 地元企業が開発しOSSとして公開しているコンテンツ管理システム「Joruri」をホームページに使用する徳島県は、「コスト削減のためにOSSの採用を県の方針としている」(企画総務部情報システム課専門幹の山住健治氏)という(関連記事)。

オープンな標準を重視する自治体が増加

 情報処理推進機構(IPA)非常勤研究員の岡田良太郎氏は、「特定のベンダーに縛られない“オープンな標準”に基づくシステム調達を重視する自治体が増え、50%を超えた」というIPAの調査「第3回地方自治体における情報システム基盤の現状と方向性の調査」を紹介した。

 課題は人材不足だ。長崎県の島村氏は、対策として「導入を成功させた職員を、ほかの自治体に派遣してノウハウを広めればよい。その気になればできる」と提案した。自治体では外字への対応が重要だが、多くのOSSは苦手。「外字を画像として蓄積するなど、思い切ることも必要」といった発言もあった。

◎関連リンク
オープンソースカンファレンス(OSC)2010.Government公式サイト(講演資料)
オープンソースカンファレンス(OSC)2011.Government公式サイト