ネオレックスは、名古屋にあるベンチャー企業。タイムカードに代表される勤怠管理業務を自動化するSaaS「バイバイ タイムカード」を展開している。同サービスを始めた2003年は、それまで事業の中心に置いてきたマイクロバーコード事業が行き詰まり、経営上も非常に厳しい時期だった。それから7年と少し経った今、大企業への導入などもあり、黒字化を達成。大きな賞も受賞している。(ITpro編集部)

画面●バイバイ タイムカード
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 「バイバイ タイムカード」(画面)のスタートは、とても小さな一歩でした。極端な話、新たな開発は一切せず、プレゼンテーション資料だけで営業を開始しました。理由は、経済的な点にありました。ただでさえ厳しい経営状況の中で、収益が上がるまで時間のかかるSaaSビジネスに多くの開発リソースを割くことができなかったのです。

2000件の売り込み電話

 事業を始めた当初、我々は約2000件の売り込み電話をかけました。結果は大失敗。わずかにもらえたアポイントも、申し込みにつながるものはありませんでした。この時、我々は勤怠管理システムが売り込まれて何かに気づき、採用するタイプの商材ではなく、ニーズを感じた顧客に見つけてもらうべき商材であると感じました。そして、Webサイトで引き合いをもらう営業方針に切り替えました。初めから多くの引き合いが来たわけではありませんが、Webサイトからの問い合わせは少しずつ増えてきました。

 また、それとは別に「代理店に売ってもらおう」と考えたこともありました。ところが、当時の株主の紹介で大手SIベンダーでプレゼンをやったところ、先方の部長に言われた言葉は「ユーザーが100社越えたらおいで」でした。考えてみれば当たり前です。「自分たちで売れないものを人が売ってくれるはずないよなぁ」と腹落ちし、まずは自分たちで売ることを考えるようになりました。

 Webサイトで引き合いをもらい、関心を持ってくれた顧客に丁寧に提案する。こうしたプル型の営業スタイルは、人員の少ないネオレックスが自社で営業を進めるうえで、当初はやむを得ない選択肢でもありましたが、結果として非常に効率的な営業スタイルを確立することとなりました。

社内を盛り上げないと!

 苦しい時期が続きましたが、地道な活動を通じてバイバイ タイムカードは、少しずつ顧客を増やしていきました。2003年に第一号ユーザーを獲得。2004年には10社で利用してもらえるようになり、2005年にはアカウント数で1万人を突破しました。

 ところが、この時期の売り上げは全部を足しても実に微々たるものでした。1件1件の受注額は初期で数十万円、月額で数万円です。1件1件が派手な売り上げ数字になりにくい分、従業員の士気もなかなか上がりません。そこで、意識的に社内を盛り上げる工夫をしました。

 ネオレックスは、IT企業では珍しいかもしれませんが、毎日朝礼をやっています。ここで、小さな一つ一つの受注や、10社、1万人などの節目を毎回全社に発表していったのです。「営業中だった株式会社○○さん、お申込みいただきました!」「先月末で利用者総数が1万人を突破しました!」。このような進捗を元気に発表するのです。わずかずつでも世の中に受け入れられていく実感が、みんなの士気を高めてくれたのではないかと思っています。