最新規格「IEEE 802.11n」に準拠した高速無線LANの構築術を紹介してきた本特集の最終回は、電源に関するノウハウを伝授する。無線LANのアクセスポイント(AP)を設置したい場所のそばに肝心のコンセントがない、そんなケースはよくある。どうしたらよいのだろうか。秘策は「LANケーブルの使い方」にある。

写真1●PoEインジェクターとPoEスイッチ
写真1●PoEインジェクターとPoEスイッチ
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 企業のオフィスでは、自由に使えるスペースが限られ、壁面や天井など電源をとりにくい場所にAPを設置しなければならないことがよくある。そのような場合、データ送受信に使うLANケーブルから電力も供給できる「PoE」(Power over Ethernet)と呼ぶ技術を使えばいい。

 既存の無線LAN規格「IEEE 802.11a/b/g」に準拠したAPを設置するときはもちろん、11n準拠のAPを設置するときも、PoEが必要になる場面は多いはずだ。この際、PoEを使う方法は2通りある。

 一つは、APをつなぐLANケーブルに電力を供給し、イーサネットフレームを運ぶ電気信号は上位のLANに素通しするだけの「PoEインジェクター」と呼ぶ装置を使う方法(写真1)。もう一つは、PoEの給電能力とレイヤー2スイッチの機能の両方を備えた「PoEスイッチ」を使う方法である。

 PoEインジェクターには給電ポートが一つの製品もあり、既存のエッジスイッチをそのまま使い続けたいケースや、フロアのAP数が多くないケースでは、PoEスイッチより使い勝手がよい。

古い11n製品は「PoE」では電力不足

 11nは高速な通信を実現している分、11a/b/gに比べると消費電力が大きくなりがち。このため従来は、11nのパフォーマンスをフルに引き出すにはPoEでは電力が足りないとされてきた。そこで登場したのが「PoE+(プラス)」である。

 PoEの仕様は「802.3af」という規格で定められており、給電能力は1ポート当たり最大15.4W。これに対してPoE+の仕様を定めた「802.3at」では、1ポート当たり最大30Wと規定されている(図1)。

図1●PoEとPoE+の違い<br>最新の11n対応アクセスポイントの多くは、多少の制約が付く場合もあるが、基本的にPoEで動作するようになっている。
図1●PoEとPoE+の違い
最新の11n対応アクセスポイントの多くは、多少の制約が付く場合もあるが、基本的にPoEで動作するようになっている。
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