iPhoneやiPadの普及に伴って、最新規格「IEEE 802.11n」に準拠した無線LANの導入機運が企業で高まりつつある。その構築ノウハウは、次の4項目に大別してとらえると理解しやすい。(1)チャネルの設計とアクセスポイント(AP)の配置、(2)セキュリティ、(3)異なる周波数チャネルの共存、(4)電源---だ。

 今回は(3)の異なる周波数チャネルを共存させるときに注意すべきポイントをみていく。例えば、タブレット端末のiPadを使って無線LAN経由で大容量データをやり取りするなら、2.4GHz帯ではなく5GHz帯の周波数チャネルを割り当てたほうがよいだろう。

 第3世代携帯電話(3G)機を内線電話機としても利用可能にする法人向けFMCサービスの利用料金の低下などにより、以前ほどは騒がれなくなった無線IP電話機。しかし、今でも重要な無線LANのアプリケーションの一つであることには間違いない。

 特に今後は、スマートフォンにSIP(シップ)対応のクライアントソフトウエアを搭載して無線IP電話機として使う用途に対し、企業の需要が高まりそうだ。

周波数帯域でデータと音声を分離

 無線IP電話機の利用を考慮した無線LANの構築で重要なポイントは、データ通信用との帯域の分離である。従来のIP電話機には「IEEE 802.11b/g」対応品が多い。このため大抵は2.4GHz帯で使うことになる。2.4GHz帯にIP電話機、ハンディターミナルなどの低速端末を寄せて、5GHz帯にはノートパソコンやiPad、スマートフォンなど高い速度が求められる11n対応端末を収容するというのが、一般的な考え方だ(図1)。

図1●データと音声の周波数帯を分ける<br>無線IP電話機やハンディターミナルなどは802.11b/gだけをサポートする製品が多いため、これらを2.4GHz帯に収容し、ノートパソコンやスマートフォンなどを5GHz帯に収容するケースが多い。
図1●データと音声の周波数帯を分ける
無線IP電話機やハンディターミナルなどは802.11b/gだけをサポートする製品が多いため、これらを2.4GHz帯に収容し、ノートパソコンやスマートフォンなどを5GHz帯に収容するケースが多い。
[画像のクリックで拡大表示]

 そうした事例に、富士ゼロックスが2010年4月に運用を開始した「横浜みなとみらい事業所」がある。無線LANのインフラとしてアルバネットワークスの無線LANコントローラーと APを利用している。約2500台のIP電話機と約500台のノートパソコンを約500台のAPに収容している。IP電話機には日立電線の11b/g対応製品を採用した。このため、IP電話機は2.4GHz帯に収容し、ノートパソコンは5GHz帯に収容している。ノートパソコンのうち、最新規格の11nに対応しているのは新しい50台程度で、残りは「IEEE 802.11a」を使っているという。