世界有数のセキュリティベンダーであるロシアの「カスペルスキーラブス」。このカスペルスキーラブス(以下カスペルスキー)の創設者で、現在もCEOを務めているのがユージン・カスペルスキー氏だ。ユージン氏に現在のセキュリティ業界の動向と、日本市場への展望を聞いた。



カスペルスキーの戦略について教えてください。

カスペルスキーのCEO ユージン・カスペルスキー氏
カスペルスキーCEO ユージン・カスペルスキー氏

 私たちは技術的に世界のリーダーであることを目指しています。そして、優れた高度な製品を提供し、ユーザーに迫る危機を防ぐことが目的です。そのための研究開発やマーケティングの舞台を、モスクワをはじめ世界中に置いています。日本の市場にも、強くコミットしています。

 私たちが開発している製品はコンシューマ向けだけではありません。エンタープライズ向けの製品も開発しています。最近はモバイル、なかでもスマートフォンのセキュリティに注力しています。

日本市場ではコンシューマ向けには有名ですが、ビジネス向けにも広めていくことは考えていますか?

 もちろんです。

 ただ、コンシューマ向けの製品は比較的気軽に製品を変えられますが、ビジネス向けの場合はそうはいきません。たいていの場合は、もっと保守的な対応になります。企業ユーザーは製品を導入するという意思決定をする時間もかかります。

 だが、ロシアを例にとると、コンシューマ市場だけでなくビジネス市場でも、カスペルスキーは50%のシェアを確保しています。ロシアよりも遅れて参入したドイツでも、コンシューマ向けには50%のシェアを確保しています。さらに、ビジネスユーザー向けにも主にオンラインで製品を提供しています。

 とはいえ、日本市場は確かに特殊で、ほかの国よりさらに保守的です。日本の企業ユーザーに、既に導入している製品を変更してもらうためには、ものすごく長い時間が必要だと認識しています。残念ながら、特に日本のユーザーに普及させるための特別な戦略を用意しているわけではありません。

 だが、何も手を打っていないというわけでは、もちろんありません。日本のオフィスにも研究開発の要員を配置しています。

 日本のオフィスは近々移転する予定で、従業員を増やすことを計画しています。例えば、ソフトウエアをテストする人などを増やします。日本独特のIT環境の中で、カスペルスキーの製品がきちんと動作するように研究開発を進めていきます。そのために、小規模ながら日本にも研究開発の要員を置いています。