香港には現在、米国の大手クラウド事業者が進出している以外に、NTTコミュニケーションズや富士通といった日本の事業者も大規模なデータセンターを構えている。データセンター立地としての香港の魅力は何か。事業者に話を聞いた。



 香港に進出している米国の大手クラウド事業者とは、米マイクロソフト、米ラックスペースホスティング、米ベライゾンビジネスである。彼らは香港のデータセンターを拠点に、中国本土や他のアジア諸国にクラウドサービスを提供している。

 また日本の事業者では、KDDI、NTTコミュニケーションズ、富士通が自社設備のデータセンターを構えている。特にNTTコミュニケーションズと富士通のデータセンターは、床面積が1万平方メートルを超える大型施設である。

 香港に進出する、ラックスペースホスティング、ベライゾンビジネス、KDDI、NTTコミュニケーションズ、富士通香港の5社の責任者に話を聞いた。今回は、彼らへのインタビューを通じて、各社の思惑や戦略を見ていこう。

米ラックスペースホスティング:ジム・ファーガン氏

 米ラックスペースホスティング(Rackspace Hosting)は、米国では米アマゾン・ウェブ・サービシズに次ぐ業界2位のIaaS(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)事業者だ。1998年に創業したラックスペースは、元々は米国でのみ営業していたホスティング事業者だったが、2005年から仮想マシン貸しなどのIaaS事業を開始。2008年から世界展開も始め、同年に香港データセンターを開設した。

 現在同社は、米国に6カ所、英国に2カ所、香港に1カ所のデータセンターを運営し、合計で6万4000台以上のサーバーを運用しているという。アジア太平洋地域担当のバイスプレジデント兼マネージングディレクターであるジム・ファーガン氏(写真1)がインタビューに答えた。

香港では、米国と同じサービス内容を提供しているのですか?

写真1●米ラックスペースホスティングのバイスプレジデント兼マネージングディレクターであるジム・ファーガン氏
写真1●米ラックスペースホスティングのバイスプレジデント兼マネージングディレクターであるジム・ファーガン氏
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ファーガン氏:我々は香港の通信事業者であるPCCWから、データセンターのフロアを借りて、顧客にサービスを提供している。PCCWのデータセンターフロア内に、当社専用の囲いを設けて、その中で当社のスタッフが、サーバーを運用している。データセンターフロアは借りているが、その中でもオペレーションは、セキュリティ水準も含めて、米国と完全に同等だ。

 当社のサービスは、顧客毎に専用のサーバーを用意する「マネージドホスティング」と、1時間単位で仮想マシンを貸したり、ストレージを貸したりする「クラウドホスティング」の2本柱だ。香港では現在、マネージドホスティングサービスのみ提供しているが、クラウドに関しても間もなく開始する予定だ。

ラックスペースの特徴は?

ファーガン氏:クラウドコンピューティングの最大の特徴は、その規模だ。当社は、米デルの最大規模の顧客の1社で、毎月3000台のサーバーを増設している。専門知識を持ったエンジニアが3000人いて、顧客に対して徹底したサービスを提供している。

データセンター立地として、香港を選んだ理由は?

ファーガン氏:当社が世界展開を考える上で、アジア地域にデータセンターが必要だと考えた。候補としては、香港以外に日本やシンガポールも検討した。日本に関しては、市場がかなり成熟しているし、強力な競合も多いので、候補から除いた。

 香港を選んだのは、やはり中国本土の市場を視野に入れている。中国市場は今後、高い成長が期待できるし、香港政府も投資の呼び込みに熱心だった。