今回は、固定客化、すなわち「一般客」や「知人客」を「友人客」や「信者客」にランクアップさせるための具体策を説明する。(1)接触頻度月1回、(2)自社でできること紹介、(3)特別イベント開催、(4)アフターフォロー連絡――の四つの法則がある(表1)。順番に説明しよう。

表1●固定客化を成功させる四つの法則
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表1●固定客化を成功させる四つの法則

(1)接触頻度月1回の法則:顧客が喜ぶ訪問理由を作る

図1●「接触頻度月1回の法則」の概要
図1●「接触頻度月1回の法則」の概要

 「1カ月に1度は顧客と必ず会う」というルールを決め、接触頻度を高める活動が「接触頻度月1回の法則」である(図1)。顧客との距離感は非常に重要である。当たり前のことだが、接触頻度が低くなると、どうしても顧客との関係が疎遠になる。一定の接触頻度を保っていない顧客は、徐々にリピート購買が減っていく。

 月1回といった一定の接触頻度を保ちながら、顧客に役立つ情報やサービスを提供するのが固定客化の第一歩である。そのためには訪問理由を「作る」ことが欠かせない。営業の商品案内では売り込み感が強く、顧客は警戒してしまう。訪問理由はあくまでも顧客にとってメリットがあるものでなければならない。

 当社(船井総合研究所)が支援するシステム会社は、「無料の定期点検」という理由で、月1回フィールドエンジニアが顧客を訪問する仕組みを作った。保守契約を結んでいない顧客にも喜ばれる上に、接触の機会を作ることができる。「未然にトラブルを回避するため訪問させていただく」という名目であれば、嫌がる顧客はいない。そのためにかかるエンジニアの工数は、顧客との接点機会を作る販促活動と思えばよい。

 エンジニアが定期的に訪問していれば、顧客のほうから「あ、そういえばこんなことできるの」と相談を持ちかけてくる。必然的に、商品やサービスを提案する機会が増える。

 さらに月1回ペースで訪問していれば、顧客の環境変化にも気づきやすくなる。定点観測の結果を、早めのアクションにつなげることも可能だ。例えば、自社が扱っていないメーカー製のPCが顧客のオフィスに設置されていることに気づいたら、競合他社の売り込みを警戒するといった具合だ。

(2)自社でできること紹介の法則:既存顧客にも宣伝

 二つめの「自社でできること紹介の法則」とは、自社が提供できる商品やサービスの全体像を顧客に認知してもらう活動である。多くの商品/サービスが顧客に提供できるにもかかわらず、主力の1品しか導入してもらっていない顧客は多い。こうした顧客には、こちら側から積極的な情報開示や提案しないと、販売機会を逃してしまう。

 別の支援先企業では、情報提供を怠っていて他社に顧客を奪われたのを機に、積極的な情報提供に転じた。自社がその地域で唯一提供できるサービスの情報をまとめたカタログを用意し、既存顧客に配布した。その結果、顧客からは「こんなこともできたの」と言われ、すぐに数件の成約につながった。

 また別の支援先企業では、顧客に請求書を送付する際に、自社が提供できる商品情報をまとめたチラシを同封した。400枚程度配布したうち、3社から問い合わせがあった。この場合も顧客から問い合わせを受けたときに「こんな商品も扱っていたのですね」という声が上がった。

 これらの例からもわかるように、認知活動(マーケティング)は、新規の見込み客集めだけが目的ではない。既存顧客に対して「こんなことができますよ」と伝えることを忘れてはならない。