これまでは「集客」や「新規事業の立ち上げ」に焦点を当てて論を進めてきた。今回からの2回は、既存顧客の深耕で安定収益を確保するための法則に話を進めたい。なぜ既存顧客の深耕が収益の安定につながるのか、顧客を固定化するための法則を解説する。

不況だからこそ重要な「固定客化」

 ここ数年のように景気が悪化すると、経営者はあらゆる投資に対して慎重になる。無駄を省き、必要最低限の投資しか実行しなくなる。当然ながら、経営者が「無駄」と判断したものは、容赦なくコスト削減の対象となる。

 さらに不況のときは、取引先の見直しが頻繁に起きる。経営者は現在の取引先が自社にとって最適なのかを真剣に考えるようになるからだ。結果として相見積もりが増え、競合が激化する。これまで固定客と考えていた顧客が急に契約を解除するといったことも起こる(図1)。

図1●不況気には顧客が流動化する
図1●不況期には顧客が流動化する
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 これまで安定した収益を上げていた顧客との契約解除は、経営に大きな打撃を与える。だからこそ、この不景気を乗り越えるためには既存顧客を固定客とする取り組みが欠かせない。新規開拓で顧客を増やしても、固定化できなければ収益が安定しない。

 顧客の固定化に向けてまずすべきは「既存顧客の深耕」である。要は取引のある顧客にリピート購買を促すとともに、他社への流出を防ぐ。

 顧客を深耕できているかどうかは、リピート率を見ればわかる。顧客が自社のことを気に入ってくれていれば、自ずとリピート率は上がる。逆にリピート率が低いときは、顧客が自社の製品・サービスに不満を抱えており、流出する可能性が高い。最近、リピート率が下がった顧客は、重点的にフォローしなければならない。

 他社への流出の防止にはリースの把握も重要となる。リース満了のとき競合他社がリプレース攻勢をかけてくるので、顧客が流出しやすいからだ。顧客ごとのリース満了時期をしっかり確認して、その前後には手厚いフォローをすべきだろう。