長引く不況の中、中小のシステム会社を取り巻く環境は、非常に厳しい。購買意欲の冷え込みや案件の小型化もあって、既存顧客からの売り上げは落ちる一方。特に大手システムインテグレータからの下請けに頼っていたところはつらい。新規顧客の開拓や新規事業への進出を図らなければ、生き残りさえ難しい状況だ。

 これまでのIT業界では、 既存顧客の深耕が売り上げアップの定石だった。法人向けの営業では、「どうやって見込み客と最初の接点を持つか」が鍵を握っている。つまり、その部分がすでに解決できている既存顧客の深耕は、新規顧客の獲得よりはるかに楽なのは当然だった。

 そのように考えれば面倒な新規開拓ではなく、既存顧客の深耕で売り上げを増やせれば越したことはない。だが、現実はそれを許さない。

 「今のままでは会社の将来が心配だ」。中小システム会社の経営者に会うと、異口同音にこうこぼす。一方で新規開拓の必要性を感じながらも、「ノウハウがないから新規開拓なんてできない」「今さら新規を獲得するなんて無理」とあきらめてしまっている経営者も散見される。

 中小のシステム会社には、営業担当は経営者だけというところが珍しくない。社員は営業経験がほとんどないので、今さら営業には回せない。その難しさを知っている分、経営者も新規顧客の開拓に前向きになれないのだろう。

 一方で、コツさえつかめれば、新規顧客の開拓に積極的に取り組みたいというのが、中小システム会社の経営者の本音だろう。そこで今回は、「半自動的に新規顧客を開拓し続けるテレアポマーケティング(電話営業)のコツ」を紹介しよう。これは実際の成功事例に基づいた手法である。

新規開拓にはテレテアポが有効

 新規顧客の開拓にテレアポが有効な理由は主に三つある。

 最初の理由は、「継続的かつ能動的に実施できる」ことだ。DM(ダイレクトメール)やセミナーも新規開拓に有効だが、これらを毎日は実施できない。事前の企画に時間がかかるし、仮に同じ企画を続けても結果が出ない。そして何よりコストがかかる。これに対してテレアポは一度ルールを決めれば能動的に顧客を開拓でき、かつ継続的に実施できる。

 テレアポが新規顧客開拓に有効な二つめの理由は、「低投資で実施できる」ことだ。テレアポでは人件費以外に必要となるのは電話代くらい。DMの印刷コストやセミナーの開催などのコストはほとんどかからない。投資が少ない分、継続して実施できるのは言うまでもない。

 テレアポが有効な三つ目の理由は、簡単に開始できることだ。理論的にはわずか数秒の電話でアポイントを取り付けることも不可能ではない。電話なので社内にいながらアプローチができる。

 うまく機能すれば、1日に数十社、数百社とコンタクトをとることも可能だ。実際に小社(船井総合研究所)が支援した事例では、新規顧客との接点がほぼゼロだったシステム会社が、テレアポ導入後の1カ月で20社を超える見込み顧客との面会にこぎ着けた。こうしたことからもテレアポの有効性は理解できるだろう。