ビールの種類が豊富でムール貝などの海鮮料理が有名なベルギー。EU(欧州連合)やNATO(北大西洋条約機構)が本部を置く国だ。
そのベルギーの今一番の話題は連邦政府の樹立である。2010年6月の総選挙で7政党が選ばれたが、文化も異なるフランス語系のワロン地域とオランダ語系のフランダース地域の折り合いがつかず、今に至るまで無政府状態が続いている。まるで二つの国が延々と論争を続けているようだ。ただし日々の行政が正常に動いているためか、人々は気にしている様子もない。
ビジネスにおいても長丁場の議論

上記の例のようにベルギーでは徹底的に議論を進める傾向がある。それはビジネスでも同様だ。
例えばかつて当社とベルギーのフラグシップキャリアであるベルガコムとのやり取りで、当社が発注したデータ回線の納期が6カ月遅れると通告されたことがある。理由は例外的に荒れたその年の冬の悪天候のために、アクセス設備の更改工事が遅れていることだという。当社とは事業者同士の太いパイプがあるが、このときばかりは上長へ掛け合っても埒が明かない。
それでも懇願し続けた結果、とうとう解決方法があると言ってきた。廃止オーダーのあった回線をそのまま利用するという、日本では通常やることがないウルトラ技の提案だ。結果、納期は多少遅れたものの無事開通。ベルギーでは長丁場の議論に耐える気力と理屈が大切だと感じた。
あらゆる分野でルール作りを先導
ベルギーはEU本部のお膝元だ。議論を好むベルギー人気質が反映されているためか国際ルール作りにも熱心だ。EUが2009年に打ち出したリスボン条約ではEU大統領、外務大臣までも作り出してしまった。
EUは現在、外交、貿易などで優位に立とうとあらゆる分野で先手必勝とばかりに国際ルールを作っている。例えば通信分野でも、環境保護を促進するため通信機器から発生するCO2の測定方法を定めようとしている。データセキュリティの面でもデータをEU国外に持ち出せないルールを作ったりと不穏な動きもある。
ルール作りの枠外に置かれている我々も、いったん決まればお達しを受けることになるのは目に見えている。某日系電線メーカーも競争法に違反したとして高額の罰金を課された。日本出身の我々もEUの議論に飛び込んで積極的にロビイング活動をしたほうが良い時期に来ているのではないか。
ベルギー人は今は負けていても、有利なルールを作っておくことで、2~3世代のうちに巻き返せると思っている節がある。対する我々も長期戦で議論に臨む必要がありそうだ。