イーサネットは時代とともに進化し、今を時めくクラウドを支える重要な技術になっている。
クラウドとは、ユーザーが必要なときに必要なだけのコンピュータリソースをネットワーク経由で利用できるサービスである。導入コストや管理コストの削減、可用性の向上といった理由から、利用者が急増している。クラウドの実態は、データセンターである。このデータセンターの内部では、イーサネットの技術がいろんなところで使われている。
そこで今回は、ここ最近のデータセンターを取り巻く環境とその内部の変化、そして近い将来データセンターで利用されるようになるイーサネットの最新技術を取り上げる。
仮想サーバーの集積とストレージの統合が進む
データセンターは、クラウドユーザーの急増に伴い、新設と規模の拡大の動きが活発化している。と同時に、データセンターの内部でも変化が起こっている。大きく二つある。一つはサーバーの仮想化の集積度。もう一つはストレージI/Oのイーサネットへの統合である。
データセンターの内部は、外部ネットワークにつながるL3スイッチ以下に、サーバーとストレージ、複数のネットワーク機器が配置されている(図3-1)。1台の物理サーバー上でソフト的に複数のマシン(仮想マシン)を動かすサーバーの仮想化が導入されている。最近では、ユーザーの増加に合わせて1台のサーバーで稼働する仮想マシンの数が増えている。物理サーバーのマシンスペックを向上させれば、スペースを増やす必要がないからだ。
ストレージI/Oにも変化が起こっている。ストレージの接続には、ファイバーチャネルを利用したSANと、イーサネットを利用したNASやiSCSIを使うものがある。データセンターで一般的に利用されているのは、高いデータの整合性や低遅延のデータ転送を実現できるSANである。そのため、データセンターにはSANとイーサネットを使うLANという2種類のネットワークが存在する。SANは、サーバーにSAN用のインタフェースを持たせたり、SAN用の光ファイバーケーブルを敷いたりする必要がある。これが、データセンターの設備増強やコストダウンに悪影響を与える。そこで最近は、ファイバーチャネルをイーサネット上で使えるようにする技術FCoEを使って、ストレージI/Oをイーサネットに統合する動きが活発化している。
こういったデータセンター内部の変化によって、ネットワークも大きく変わろうとしている。そこで採用が進みそうなのが、イーサネットの最新技術である40Gビット/秒や100Gビット/秒のイーサネット(「40GbE」や「100GbE」)と、冗長化や高速化を実現する「TRILL」である。順番に仕組みを見ていこう。