これまで、筆者はNTTぷららが提供する「ひかりTV」について、2度ほど本稿で実験を行っているが、今回は、2010年12月からレンタルがスタートしたHDD内蔵セットトップ・ボックス(STB、NEC製「IS1050」)を、筆者事務所(東京都文京区:集合住宅)で使用してみた。

 今回は事務所のビルが古いため電話回線上のVDSLによる、Bフレッツ環境で試してみた。ちなみにこのビルでの回線加入者は4世帯のため、異なる日時で4度ほど実験したが、映像のコマ落ちの現象は皆無であった。

ひかりTVを使い倒せるHDD内蔵機種

 本機は容量500Gバイトのハードディスク装置(HDD)と、地上デジタル放送とテレビサービスをそれぞれ録画できる受信機を2台実装する(Wチューナー仕様)ものである。地上デジタル放送を録画しながら、BSデジタル放送(NHKとWOWOW)を含むテレビサービスが裏録画可能というところがうれしい。

 なお、今回のようなBフレッツなどの集合住宅では地上デジタル放送のIPTVによる再送信サービスは受けられないが、BSデジタル放送は受信できる。今回は、主に2010年12月に再送信がスタートしたWOWOWをEPG録画した上で再生したが、3日先の番組を選択するためにスクロールしたEPGもそれほどの鈍さは感じず、スムーズに録画予約ができた。

 画質を調べるためBSデジタル放送の番組について、「AQUOS LC-46LB3」を使って放送波による映像と比較視聴してみた。ひかりTV上のWOWOW再送信は、伝送レートが約10Mbps(H.264/MPEG-4 AVC)でフォーマットされている。ちなみにMPEG-2からH.264へのトランスコードを行うため、光の点滅や急激なズームアップなどではブロックノイズが増加することがある。しかし、画質はほぼ維持されており、46インチ型の画面から2m正面での視聴鑑賞にも耐えられる。

 個人的な感想をいえば、音楽ライブでのバリライトの点滅のようなシーンに遭遇しない限りは、映画や全豪オーブンなどの中継映像では直接受信と比較して、オリジナルを損なうような質感の低下はなかった。

 このほかスペースシャワーHD、ザ・シネマHD、GAORA HDについては、スカパー!HDでの同一サービスと切り替えながら比較視聴を行った。こちらも差異はほとんど見い出せなかった。ひかりTVの代表的パッケージである「お値うちプラン」の月額料金内で見放題で視聴できる35のHDTVチャンネルと約7000本のVODサービスがあるのは、スカパー!やケーブルテレビにとり強力なライバルとなってきているのは当然のことと認識できるだろう。

 使用して気になった点は、モデムとの接続が切れると、たとえエアチッェクした録画番組の再生のみにも、画面上にアラーム関連の警告文字がでる。通常の家庭での使用を考えると、本機を設置した後、パソコンやデジタル家電を接続したり無線LAN環境の構築を前提にすれば、フレッツのモデムにはIPv6のパススルー機能がついたルーターなどが不可欠であることも述べておきたい。

3DのVOD再生画質は合格水準、ラインアップ拡充を期待

[画像のクリックで拡大表示]

 筆者は、ひかりTVがビデオサービスとして揃えた3D映像を初めて体験した()。本機は3D対応テレビと必ずHDMI接続で直結する必要がある。ただし5.1サラウンド再生環境を構築する場合は、デジタル音声出力端子を伝送するために、光ケーブルでAVアンプに接続する必要がある。

 実験した印象では、ひかりTVが提供しているビデオサービスの洋画ジャンルで5.1サラウンドでエンコードされているタイトルの充実を図ってほしいと感じた。

 鑑賞した3Dタイトルは、「完全なる飼育 メイド for you」(深作健太監督の作品)。秋葉原にみるオタク文化を青少年の目を通して、アイドルものを織り交ぜながらラブストーリーを描く。作品の一部が3D化されたものだが、AQUOSを通して観る映像は視聴自体は問題なく行える画質だった。

 アニメやエンターテインメントなど各ジャンルでも数本ずつ3D作品が用意されている。ただし、スカパー!HDの3D専門チャンネルで多くの3Dコンテンツの放送も始まっており、ひかりTVでもよりコンテンツの充実が求められるところだ。

 ハリウッドの3Dタイトルは、2月初旬の段階では提供されていた二つのタイトルは、いずれもスカパー!HDで配信されている洋画とはタイトルが異なった。VODだからこそ好きな時に視聴できる強みがあるわけで、スカパー!との差別化を目指した独自映像の蓄積が求められているに違いない。


佐藤 和俊(さとう かずとし)
放送アナリスト
茨城大学人文学部卒。シンクタンクや衛星放送会社,大手玩具メーカーを経て,放送アナリストとして独立。現在,投資銀行のアドバイザーや放送・通信事業者のコンサルティングを手がける。各種機材の使用体験レポートや評論執筆も多い。