ジャパンケーブルネット(JCN)は、JCNグループ局における地上デジタル放送のデジアナ変換サービスを2011年3月から順次開始する。当初は2011年7月24日の開始を予定していたので、4カ月前倒しすることになった。

まだテレビが使えるハズが…

 JCNは、デジアナ変換サービスの前倒し実施の理由として、早い段階でのアナログテレビを持つ視聴者への周知を挙げる。JCNなどのケーブルテレビ事業者が暫定的な導入を決定しているデジアナ変換サービスを利用すれば、現状のアナログテレビで2011年7月以降も期間限定で番組を視聴できる。デジアナ変換サービスは、視聴者の2台目・3台目を含むアナログテレビの買い替え負担の平準化が目的の一つになっている。

 一方で地上アナログ放送では、画面の上下の黒い帯の部分に「ご覧のアナログ放送は2011年7月に終了し、見ることができなくなります」という字幕が表示されている。この表示は毎日流れており、視聴者への訴求力は大きい。JCNが会員誌やコミュニティーチャンネルなどでデジアナ変換サービスの周知に努めたとしても、すべての視聴者に同サービスの趣旨や内容を完全に理解してもらえるかどうかは分からない。本来、デジアナ変換サービスで負担の平準化ができた世帯が、「もうアナログテレビは使えない」と考えて、家庭内のテレビをすべて買い替えるケースが起こりかねない。

 そこで、このサービスを地上放送の完全デジタル化の期限に先駆けて実施し、対象エリアでどのようなメリットが生まれるかを示すことにした。このほかにJCNは、「総務省がケーブルテレビ事業者に早期導入を要請している」「地上アナログ放送の終了間際に想定していない事態が発生する可能性はゼロではない。できることは早めに行うことで、安心してサービスを提供できると考えた」ことも、早期開始を決断した理由として挙げた。

ガイドラインと指針の策定など準備は終了

 ケーブルテレビがこのサービスを行う際の基本的なやり方やルールの策定は既に2010年までに終了していた。具体的には日本ケーブルテレビ連盟(ケーブルテレビ連盟)が2010年7月から12月にかけて、ケーブルテレビ事業者がデジアナ変換サービスを導入する際の二つのガイドラインおよび一つの指針を順次策定した。

 まず、2010年7月に、デジアナ変換サービスの手法や導入時の課題をまとめた「デジアナ変換導入ガイドライン」を制定した。このガイドラインでは、デジアナ変換サービスを提供するためのヘッドエンドの構成や、サービスの内容(SDTV放送で画面のアスペクト比は4対3、EPGや文字放送には非対応など)を取りまとめた。

 このガイドラインに合わせて策定されたのが、「デジアナ変換再送信同意取得の指針」である。ケーブルテレビ事業者がその地域の地上放送事業者に提出する「再送信同意書」については、「地上デジタル放送の再送信同意を取得していることを前提にした簡略化が望ましい」として、ケーブルテレビ事業者と地上放送事業者の手間軽減を提言している。例えば、地上デジタル放送の再送信同意書を既に提出している場合は、これに付帯する覚書を作成すればよいとする、といった具合である。チャンネル番号については、「再送信同意取得時に地上放送事業者と方針を確認すること」とした。さらに、現行の地上アナログ放送の再送信で使っているチャンネルと異なる場合、視聴者はリモコンを操作して再設定する必要がある。このため、「現行の地上アナログ放送と同一のチャンネルで行うことが望ましい」とこの指針で明記した。

 「デジアナ変換における画面告知ガイドライン」は、2010年12月に策定された。このガイドラインは、ケーブルテレビ事業者がデジアナ変換サービスの画面上で行う視聴者への告知の円滑化を目的とする。ケーブルテレビ事業者は、画面告知に当たり、「2011年7月の地上アナログ放送終了時の視聴者の混乱を避けること」「2015年3月末のデジアナ変換サービス終了時の視聴者の混乱を避けること」を基本原則とする。告知は、レターボックスの上下の黒い帯の部分を使ってメッセージを表示する。上の黒帯部には、デジアナ変換サービスであることを視聴者に周知するため、「デジアナ」もしくは「デジアナ変換」のロゴを原則、常時表示する。

 下の黒帯部には、デジアナ変換サービス開始から2014年9月までは、「ご覧のテレビ放送は2015年3月末までの暫定的な措置として、ケーブルテレビ事業者がデジタル放送をアナログ放送に変換して放送しています」という趣旨のメッセージを表示する。サービス終了の半年前である2014年10月からは、「この放送は2015年3月末に終了します。お早めにデジタル受信機への切り替えをお願いします」というようなメッセージにして、視聴者にデジタル化への対応を促す。画面下部のメッセージも、2014年10月から原則常時表示する、としている。