スーパーの試食コーナーにジャムを24種類も並べたときよりも、6種類だけ並べたときのほうが売り上げは伸びる─。行動経済学で最も知られている実験の1つ、「ジャム研究」を行った著者が、数多くの研究成果を挙げながら、選択が何に左右され、またどんな影響を与えるのかといった議論を展開していく。

 選択の自由とは疑う余地の無い「善」の1つだろう。だが、本書を読み進めるうちに、それにも疑問が生じてくる。「選択に制約を課されることで、逆に本当に大切なことだけに目を向け、選択しやすくなる」。全盲の著者は、そのハンディによって選択を制限されることを尋ねられて、こう答えたという。哲学的な興味もそそられる一冊。

選択の科学

選択の科学
シーナ・アイエンガー著
櫻井 祐子訳
文藝春秋発行
1700円(税込)