投資や費用回収の失敗は収益悪化に直結するリスクだ。場合によっては、中国からの撤退を選択せざるを得ない状況に陥るかもしれない。中国では先払い方式が基本など、固有の商習慣などが存在する。こうしたリスクを押さえていれば、事前に対策を施せるはずだ。お金にまつわる5つのリスクを紹介する。

リスク16●費用回収が難しい

 中国では費用は先払い方式が基本。このため、商品やサービスの納品後に支払う約束をしていた対価を何年も滞納するケースがある。多くの日系企業は、対価の全額前払い方式を徹底している。

 口約束にも注意を払う必要がある。ある日系ITベンダーは、プリンターなどのハードを納入する場合、「1年間に1500元の専用トナーを4本使用できる」といった具合に、消耗品についても使用可能な数まで契約書や提案書に盛り込んでいるという。

リスク17●補助金制度への依存

 中国政府からの補助金を前提に収支計画を立てるのは望ましくない。あらかじめ補助金を見込んだ収支計画を立ててしまうと、補助金が廃止になった場合に赤字を垂れ流す可能性が高まるためだ。

リスク18●価格があいまい

 中国では交渉による価格決定が一般的だ。このため、同じ商品であっても、案件ごとに価格が変動し、事前に収支計画を立てづらい。クボタは、販売代理店に対して統一した卸売価格を提示したり、オフシーズンの値引き率を管理するといった日本流の販売方式を適用し、案件ごとの価格変動を極力抑えている。

リスク19●過度な初期投資

 中国からの撤退も含めた柔軟な意思決定を妨げる可能性があるため、過度な初期投資は避ける必要がある。中国に進出した当初は、必要最低限の情報システムと人員で事業を展開すべきだろう。システムについては、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を利用するというのもコストを抑えるという意味で一つの選択肢になる。 

リスク20●急速な賃金上昇

 北京や上海、大連といった沿海部では、賃金の上昇が著しい。賃金の上積みを狙い、現地社員による大規模なストライキも発生している。日本のシステム開発会社が数多く進出する大連ではここ数年、年率10%弱のペースで賃金が上昇しているという。競合他社の賃金水準や人事コンサルタントの助言を基にした、適切な金額設定が求められる。