最新版のOracle VM Server 2.2 for x86は、オープンソースのXen 3.4をベースとした無償のサーバー仮想化ソフトである。Oracle RAC(Real Application Clusters)と組み合わせれば、グリッドコンピューティング環境のリソースを効率的に利用できる。オラクル製ソフトウエアの導入を容易にする標準テンプレートが用意されている。(編集部)

日本オラクル 北嶋 伸安

 昨今、企業システムにおいてサーバー仮想化技術の導入が一気に進んでいる。その目的はシステムのTCO(総所有コスト)の削減と言われていた。仮想化技術の導入によってサーバーを物理的に統合すれば、インフラの購買や運用/管理にかかるコストを削減できるだろうという目論見があったからだ。

 さらに先進的な企業は、サーバー仮想化技術を単なるコスト削減の武器として使用するだけではなく、今後本格的に導入が進むと予測されるプライベートクラウドを構築するための重要な基盤技術としてとらえ、積極的に導入・検討を始めている。

 プロセッサのマルチコア化が進むなか、サーバー仮想化技術を利用したプライベートクラウド環境に複数のシステムを統合し、マルチテナントを実現することができるかもしれない。しかし、サーバー仮想化技術だけで、すべてを解決できるわけではない。オラクルでは、投資対効果を考慮し、情報システムを支える次世代のIT基盤を構築する上で重要となるセキュリティ、可用性、拡張性などの要件を満たすクラウドプラットフォームを提唱している。

 2010年、サン・マイクロシステムズとの事業統合が完了し、アプリケーションからデータベース、OS、サーバー、ディスクまでのハードウエア/ソフトウエアをトータルでサポートし、プライベートクラウドを具現化する製品群が大幅に拡充された。オラクルが提供するサーバー仮想化製品群のブランドも「Oracle VM」に統一され、「Oracle VM」製品ファミリーを構成した。

 サーバー仮想化ソフトは、大きく分けてSPARCプラットフォームで稼働するLDOM(ロジカル・ドメイン)をベースとする「Oracle VM Server for SPARC」、x86ベースのXenハイパーバイザーを採用している「Oracle VM Server for x86」に分けられる。これに加えデスクトップ仮想化を実現する「Oracle VM VirtualBox」をラインナップしている。以降は、「Oracle VM Server for x86」を中心に記述する。

8コア搭載の最新Xeonプロセッサに対応

 最新版のOracle VM Server 2.2 for x86(以下、Oracle VM)は、業界標準のハイパーバイザーとして豊富な実績がある最新のXen 3.4を採用し、8コアXeonプロセッサ(Nehalemアーキテクチャ)にいち早く対応した。例えば8コアのインテルXeon 7500番台を4ソケット搭載した物理サーバー上にOracle VMをインストールすると、合計32コアをすべて認識する(表1)。

表1●Oracle VM Server for x86の特徴
表1●Oracle VM Server for x86の特徴

 ユーザーはOracle VM上に複数の仮想マシンを作成する際、仮想マシンごとに仮想CPUを柔軟に割り当てられる。CPUのオーバーコミット機能を利用すれば、コアの総数よりも多くの仮想CPUを仮想マシンに割り当てることもでき、CPUリソースの利用効率を高めた。

 1つの仮想マシンに割り当てられる仮想CPUは最大32個。CPUリソースを大量に必要とするシステムにも対応する。さらに、QoS(Quality of Services)機能も充実しており、仮想CPUの優先度や使用率などを指定することで、仮想マシンごとに柔軟なCPUリソースの割り当てができ、統合したシステムのSLA(Service Level Agreement)に合わせた運用管理が可能となる。