クラウドコンピューティング環境を利用して、IT資産を少しでも減らしたい---。こう考える情報システム部門は注意が必要だ。IFRSの新リース基準が適用になると、クラウドもユーザー企業の「資産」となる可能性がある。

 IFRS(国際会計基準)の改訂作業は進行中だ。日本企業はIFRSと日本の会計基準(日本基準)の違いだけでなく、IFRSの改訂状況にも目を向ける必要がある。

 「リース」はその一つだ。IFRSを策定しているIASB(国際会計基準審議会)は、現行のリース基準(IAS第17号)を大幅に改訂する作業を進めている。公開草案を2010年8月に公表、12月までコメントを受け付け、2011年6月までに確定する予定だ。

図1●2011年に確定予定のIFRS新リース基準*の影響例
図●2011年に確定予定のIFRS新リース基準*の影響例
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 日本では、日本基準とIFRSとの差異を埋める取り組みであるコンバージェンス(収れん)の一環として適用される公算が大きい。2011年7~9月に公開草案が登場する見込みである。

 こうしたIFRSの改訂状況の確認を「経理・財務部門に任せればよい」と考えるのは禁物だ。IFRSの新リース基準は、システム部門にも少なからず関係する可能性が高い()。特にクラウド環境の導入を計画しているのであれば、IFRSの影響を十分検討する必要がありそうだ。

リースはすべて資産計上に

 新リース基準の最大の変更点は「リースを利用している物品はすべて自社の資産として計上する」との趣旨を定めていることだ。

 現行のIFRSや日本基準はリースを大きく「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」に分け、それぞれについて会計処理を定めている。前者は契約期間の解約が不可能で、契約期間中にリ ースした製品の対価をすべて支払い終えるリース。それ以外がオペレーティングリースとなる。

 現在の基準では、ファイナンスリースを利用して取得した物品は「資産」として計上する。一方、オペレーティングリースでは利用料金を「費用」として計上するとしている。

 これに対しIFRSの新リース基準では、リースの区分を撤廃したうえで、リースはすべて借り手の「資産」として計上することを提案している。「投資家にとってはリースを区別しないほうが分かりやすい」との考え方に基づいているのだ。