対人交渉コミュニケーションにおいて皆さんがいつでも使える最強のツールは何でしょうか。

 その一つが「質問」です。

 質問は対話を動かし、相手を動かし、交渉を動かします。効果的な質問は効果的なコミュニケーションのきっかけとなり、支えとなります。

 皆さんは日常のコミュニケーションの中で質問のパワーをどれだけ意図的に使っているでしょうか。重要な対人交渉において質問のパワーをどのくらい活用する余地があるでしょうか。

 質問はときにパワフルです。使い方を誤れば相手にとって脅威となります。むやみな質問攻めは相手を脅かし、防御姿勢にしてしまうことがあります。パワフルなツールこそ使い方をきちんと学んでおくべきです。この連載では対人交渉スキルの全体像を俯瞰(ふかん)し、マクロなコミュニケーション戦略や感情表現や身体性について先に学んできました。質問のスキルは自らの心技体を背景とした上で使うべき強力な武器だと思っておいたほうがいいでしょう。

 今回は、対人交渉において質問をどのように効果的に使えるかをレビューします。

質問の効果

 質問は何のためにするのでしょうか。

 回答を引き出すために質問するのだ、と思うかもしれません。しかし質問はただ単に回答を引き出すためにするものではありません。

 優れた質問は、相手や課題への関心を示し、意識を分かち合い、考えを促し、気持ちを動かします。質問という「インプット」があって回答という「アウトプット」がある、という機械的なプロセスではありません。質問が提示された瞬間から意識や関係性が動き出します。動き出す意識や関係性にこそ質問のパワーが働くのです。