経営環境が大きく変化する中で、情報システムにも変革が求められている。最大の要件は、ビジネスやアプリケーションの変化に備えるプラットフォームの確立だ。ITベンダー各社はどんな基盤像を描いているのだろうか。オラクルが主張する「IT基盤のあるべき姿」に続き、今回は、その実現に向けてオラクルが重要視しているテクノロジーを紹介する。(ITpro)

 前回、次世代IT基盤のあるべき姿について、「性能」「可用性」「拡張性」「可変性」「セキュリティ」「コスト」のそれぞれをバランスよく高次元で実現することが重要だと提案した。そして、それらを達成するためには「ハードウエアリソースの共有化」と「高密度化」「自動化」「シンプル化」が不可欠だと指摘した。

 今回は、これらのキーワードを具体的にどのように実現するのか、その実装部分について論じたい。特に「ハードウエアリソースの共有化」と「高密度化」にフォーカスしたいと思う。

サーバー共有ではクラスターの存在を意識せよ

 ハードウエアリソースの共有化といえば、真っ先に思い浮かぶのがサーバーの仮想化だろう。だがここでは、少し精度を上げて共有化の実装を分析したい。共有化の対象として特に議論すべきものとしては、サーバーとストレージが挙げられる。

 サーバーの共有については、サーバー仮想化ソフトの導入という発想になりがちだが、OSの存在を忘れることはできない。そもそも、現在主流になっているサーバーOSは、ハードウエアを複数のユーザーで使うことを想定したマルチユーザー/マルチタスクOSである。単に共有するだけであれば、OSだけで複数のサービスやアプリケーションを並行稼働させることは技術的には十分に可能だ。OSの上で動くミドルウエアにおいても、マルチユーザーを意識した実装が組み込まれている。

 しかし、そのサービスやアプリケーション、ユーザー間の分離レベルを、もう少し深く絶対的なものにしたいというニーズに対しては、サーバー仮想化ソフトは適切なソリューションになる。サーバー仮想化はいよいよ、要件が非常に厳しい環境でも適用されるようになってきた。だが、前述したような基本的なコンセプトを意識しておくことが、最終的にリソース効率を最大化させるうえで重要になってくる。

 「サーバーを共有化する」際にはまず、サーバーよりも、もう一つ大きな共有対象となる「クラスター」の存在を認識しておく必要がある。一台のサーバーをサーバー仮想化技術を使って共有することは、リソース稼働率を上げるうえで効果的なソリューションになり得るが、障害と限界性能についての配慮が欠けている。

障害:一台のサーバーを複数のユーザーや、サービス、アプリケーションで共有する場合、そのサーバーは障害時に極めて大きなインパクトを誘発する単一障害点になる。可用性を高いレベルで求めるシステムの場合、一台のサーバーですべてを稼働させる構成は、リスクが大き過ぎる。

限界性能:一台のサーバーの限界性能は、そのサーバーが搭載できるプロセサ、メモリー、ネットワークインターフェースまたはHBA(ホストバスアダプター)と等しくなる。これらのリソースではまかなえないほどに、負荷が高まった場合、そのサーバーはそれ以上新しいユーザーを収容できず、別のサーバーを調達して同じようなシステム構成で再構築する必要がある。

 再構築の手間を解決するソリューションとしては、仮想マシンのオンライン/オフラインでのマイグレーションがある。サービスを仮想マシンとして構成しておけば、新しいサーバーにサービスを移行することは容易な運用になる。ただし、そのサービスが単体で、一台のサーバーの限界性能を超えるような場合、どのサーバーに移行しても性能問題を解決することはできない。

 たとえ、負荷に応じて反応する自動的な仮想マシン移行機能があったとしても、どのサーバーも負荷をさばくためのキャパシティが足りないために、仮想マシンは負荷を抱えたまま行く宛もなくさまようことになり、サービスの応答性は低下の一途をたどることになる。