協働MDに積極的に舵を切ったコープこうべとサンエーには共通のお手本が存在する。2003年末にいち早くPOSデータの開示に踏み切り、協働MDを巧みに取り入れてきた北海道の生活協同組合コープさっぽろ(札幌市)である。

 協働MDで小売り業界の先頭を行くコープさっぽろに倣い、コープこうべやサンエーも協働MDを始めた経緯がある。コープさっぽろには既に数多くの成功事例が生まれている。

 なかでも、日本コカ・コーラ(東京・渋谷)と組んで飲料の品切れと不適切な値引き(特売の連発)の2大ロスを減らす取り組みは斬新だ。2008年9月から2大ロスの撲滅活動を展開している。

 結果、2009年に入り、飲料カテゴリーの売上高は2009年2~8月の累計が前年同期(2008年2~8月)との比較で4.48%増と、飲料市場全体が伸び悩むなかで逆に拡大した。

 コカ・コーラは過去2年のPOSデータを受け取り、米コカ・コーラも交えて分析を進めた。具体的には、売れ筋の飲料が売り切れになって販売機会ロスを生んでいる状況を調べる「OOS(アウト・オブ・ストック=品切れ)分析」と、特売の連発が引き起こす「不適切な値引きによる売り上げや利益のロス分析」の 2つを進めた。

 これらの分析を多角的に進めるため、コカ・コーララーニングセンターの北澤宏明プランニングマネジャーは「店の規模や商品の用途、曜日別に飲料カテゴリー全体や品ぞろえ、特売を検証していった」と明かす()。

図●日本コカ・コーラはコープさっぽろにおける飲料の品切れと特売ロスに注目
図●日本コカ・コーラはコープさっぽろにおける飲料の品切れと特売ロスに注目
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品切れと不適切な値引きの2大ロスに注目

 コカ・コーラのOOS分析で、飲料売り場は無糖茶と炭酸飲料、コーヒー、スポーツドリンクの4ジャンルで売れ筋の売り場カバー率が低く、品切れが目立つことが分かった。さらに、1.5リットルなどの大容量ボトルや5缶パックなどのホームユース商材よりも、容量が小さく単品売りのパーソナルユース商材で苦戦していることや、週末の販売は好調なものの平日は売り上げが減速していることなどが次々と明らかになってきた。

 品切れの原因には、炭酸やコーヒーの売り場スペースが不足していたり、品ぞろえが売れ筋と連動していなかったりすることが挙げられた。さらに地元の北海道コカ・コーラボトリングが売り場で店員に聞き取り調査を実施したところ、飲料が売れるピーク時間帯に店員が商品補充をしていて棚に空きができている現実まで浮き彫りになった。POSデータ分析に売り場での実地調査を組み合わせると、飲料売り場の課題がはっきりした。

 一方、特売による値引きロス分析では、店の規模が小さくなるに従ってロスが大きくなっていることが判明した。特売でお得感を出しても、小規模店に通う顧客は近所から徒歩や自転車で来ていることが多く、「重い飲料をまとめ買いして持って帰ることはない」(北澤マネジャー)。

 品切れと不適切な値引きの両面から見て、飲料売り場はロス改善の余地が大きいとの結論が出た。そこでコカ・コーラは2008年秋から炭酸やコーヒーの強化、棚スペースと補充時間帯の見直し、特売すべき商材や店の選別を提案した。それが飲料カテゴリーにおける2009年2月以降の売り上げ増につながった。