IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

新システム稼働後に浮かない表情のIT担当者
ダメな“システム屋”の会話 ダメな“システム屋” 「私どもが構築した新システム、本番稼働から1カ月たちましたが、どうでしょうか。障害やトラブルの類は発生していないと聞いていますが」
ユーザー企業のIT担当者 「ええ確かに。事故と呼ぶべきものは発生していませんが、うーん・・・」
ダメシス 「と言いますと?」
ユーザー 「実は、社員たちが新システムをあまり使っていないようなのです」
ダメシス 「え、使っていないのですか?新システムを使わなければ御社の業務は回らないはずですよね」
ユーザー 「最低限の機能は使っていますよ、業務を回すために。しかし今回の主眼だった、ノウハウや顧客情報などの共有機能がなかなか使われないようで・・・」
ダメシス 「しかし、営業における成功事例・失敗事例の情報共有で人材育成スピードを加速させるとか、進捗状況の共有化で成約率を上げるといったことは、御社の経営レベルで決定されたはずですよね?」
ユーザー 「そうでしたね。しかし、経営レベルで決定したからといって社員全員が即座に動くというわけではないでしょう。おたくの会社だってそうじゃありませんか?」
ダメシス 「え、まあ、そうですが・・・」
ユーザー 「何かが不足していたんですよね・・・何かが」
ダメシス 「しかし新システムは、機能面でも使い勝手でも、欠点はないと思える自信作なのですが」
ユーザー 「システムはきれいに出来上がっていますよ。足りないのは、システム自体とは違う何かだと思います。みんなが率先して使うための何かが、ねえ」

ダメな理由:システムを作るだけが仕事ではない

 前回(第21回)に続いて、“システム屋”としての仕事のあり方や成長の仕方について触れます。“システム屋”の仕事は、とにかくシステムを作って動かすところまでで終わりなのでしょうか。

 実績データの高度な分析システムや、組織力を高める情報共有システム、タイミングを逃さないための進捗状況管理システム、といった“先進的な”情報システム構築に高額の投資をしたものの、実はあまり使われていないということは、残念ながらよくある話です。「動かないコンピュータ」ではありませんが「使われないコンピュータ」です。

 “システム屋”は、情報システム構築以前と以後を比較する“きれいなスライド”を描いて、理想に近づくために投資をしようと持ちかけます。それは、提案する“システム屋”と、それを受けて判断するユーザー企業のIT担当者の両方が、成績優秀の優等生タイプである場合に多い現象かもしれません。

 しかし経営者にとって理想的な姿が、現場の従業員が望む姿と同じだとは限りません。あるいは、現状と理想の間にある階段は、情報システムが完成したからといって、即座に従業員たちが駆け上がってくれるものではないかもしれません。