NECと中国レノボは1月27日、PC事業の提携と合弁会社の設立を発表した。2011年6月をメドにPC事業の合弁会社を設立し、開発、生産、販売に関する協力体制を構築する。合弁会社の出資比率はレノボが51%と、過半を握る。両社の製品ブランドは維持し、顧客サポートや製品供給、製品保証などは、従来通り継続する。

表●世界のPC市場シェア(2009年、台数ベース)
出所:米IDC
表●世界のPC市場シェア(2009年、台数ベース)

 NECの遠藤信博社長は、「世界4位のシェアを持つレノボと力を合わせることで、製品力の強化、スケールメリットを生かしたコスト競争力の向上、海外企業へのPC販売で相乗効果を得られる」と表明。レノボのヤン・ユアンチンCEOは、「NECは日本で首位のメーカー。今回の合弁で、当社も日本でナンバーワンとなる」と述べた。レノボとNECのシェアを単純合計すると9.1%となり、5位の東芝を大きく引き離す()。

 本誌の取材によると、両社の合弁についてユーザー企業はおおむね歓迎ムード。代表的な意見は、製品の価格低下が期待できるというものだ。「NECがレノボと部品調達や生産などを共通化すれば、製品の価格が下がるのではないか」。NEC製品を数万台規模で導入している、ある企業のIT部門担当者はこう話す。NECが、同社の10倍近い販売規模を持つレノボと共同で部品を調達すれば、NEC製品の部品調達コストの低減、ひいては製品価格の低下を期待できるというわけだ。

 価格に並ぶユーザー企業の関心事である品質については、「国内向け製品はNECの拠点でも生産するはず。製品の品質が落ちるとは考えにくい」(大手ユーザー)との意見がある。

 保守サポートについても、「レノボと合弁を組んでもNECのサポートは大丈夫だと顧客に訴求できないと客離れにつながりかねない」(PC業界のアナリスト)だけに、体制維持に注力するはずだ。

 レノボ製PCの利用者にとっては、保守サポートの品質が一層高まる可能性がある。「NECはサポート要員を全国に配置しており、流通のチャネルとの関係も深い。レノボにとって、NECが持つ販売・サポート網は大きな魅力だ」(PC業界のアナリスト)。

 システムインテグレータや販売会社は今のところ静観の構えだ。ある大手販売会社は、「ユーザー企業がPCを指名買いするケースは減っており、当社はどのメーカーの製品でも取り扱う。国内で売れるパソコンの台数が大きく変わらないのであれば、当社の事業に大きな影響はない」とみる。

 世界市場だけでなく、国内市場での主導権争いも今後の焦点だ。中でも首位NECに肉薄している、2位の富士通の動向に注目が集まる。NECがレノボとの合弁で生産の合理化や価格低下が進めば、追い付きかけたNECの背中が遠ざかる。NECとレノボの合弁が業界再編の引き金を引く可能性もある。