建設機械を製造・販売する日立建機は2011年末までに、タイの販売拠点にCRM(顧客関係管理)システム「Hi-STEP」を導入する。これにより、アジア拠点へのCRMシステムの展開をひとまず終える。中国や台湾の販売拠点は、すでにHi-STEPを利用している()。

 同社はHi-STEPを、米セールスフォース・ドットコムのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)である「Salesforce CRM」を採用して構築した。Hi-STEPは、法人顧客情報や活動履歴、商談の進捗状況などを管理する。

図●日立建機が2011年末までに、アジアの販売拠点に全面導入するCRMシステム「Hi-STEP」の概要
図●日立建機が2011年末までに、アジアの販売拠点に全面導入するCRMシステム「Hi-STEP」の概要
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 さらに顧客企業の社長・社長夫人の誕生日や趣味、信仰する宗教なども参照できるようにした。営業担当者の顧客訪問件数や契約実績などをランキング形式で表示することも可能である。

 「競合する米キャタピラーやコマツと伍していくには、顧客や商談進捗などの情報を共有できる仕組みを早急に整備し、営業力を強化しなければならなかった」。日立建機の森下一成マーケティング戦略本部CRM推進部長は、Hi-STEP導入の狙いを話す。

 さらに「複数の拠点にシステムを展開する作業の手間を省くには、SaaSが最適だと判断した」と続ける。中国では当初の計画通り、約1カ月で26拠点にHi-STEPを展開した。

 Hi-STEPの導入作業は、日立ソリューションズが担当した。Salesforce CRMで開発したHi-STEPの機能追加・変更といったアプリケーション保守は、中国のシステムインテグレータである上海漢得信息技術に全面的に委託している。Hi-STEPの初期導入費は、中国とインドネシア、マレーシア、台湾の合計で2500万円。Salesforce CRMの年間利用料金は、数千万円のようだ。

 すでに導入を終えた中国やインドネシアなどの拠点では、Hi-STEPの導入効果が出ているという。「営業担当者の顧客への訪問件数が、Hi-STEP導入前と比べて約3倍に増えた。売り上げ拡大にも貢献している」(森下部長)。今後は、欧州拠点にもHi-STEPを展開する計画だ。