写真●アルパインの酒井恒夫大連開発センター総経理
写真●アルパインの酒井恒夫大連開発センター総経理

 「日本本社の意思決定を待っていては、中国の市場環境の変化に追いつけない。中国への権限委譲は必須だった」。電子部品大手、アルプス電気の子会社であるアルパインの酒井恒夫大連開発センター総経理はこう言い切る(写真)。「情報システムの整備についてもスピード最優先。三段跳びくらいの意識でやっていかないと中国では勝ち残れない」(酒井総経理)。

 カーナビなど車載機器を製造するアルパインの中国進出は日本企業のなかでもとりわけ早い。きっかけは、1991年に東軟集団(Neusoft)の前身である東北大学の工学院ソフトウェア研究開発センターとの合弁会社の設立だ。当初は、主に車載機器の組み込みソフトを開発するオフショア開発拠点という位置付けだった。

 アルパインは2003年、大連開発センターを設立したのを機に順次、車載機器のOEM(相手先ブランドによる生産)供給を開始。2007年には商品企画の一部を大連開発センターに移管した。東軟との関係もより緊密になっており、大連開発センターでは現在、約350人がソフト開発に従事するが、すべて東軟のエンジニアだ。

 大連で担う業務が拡大するのに伴い、情報システムの整備が急務になった。そこで大連開発センターを含むアルパイン電子(中国)は、独SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージを導入した。「初期投資はかさんだが、将来の事業拡大を見据えれば欠かせない施策だった」。酒井総経理はこう語る。「ビジネスにシステムが遅れをとるようではいけない。システムがビジネスの先を行くくらいの意識でやっていくべきだ」(同)とした。