IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

ユーザー企業のIT担当者にプレゼンするダメな“システム屋”
ダメな“システム屋”の会話 ダメな“システム屋” 「(スラスラスラ・・・)以上が米国の事例です。“ベストプラクティス”のご紹介でして、貴社の営業力強化に参考になると考えています」
ユーザー企業のIT担当責任者 「なるほど」
ダメシス 「私は名刺にもある通り“コンサルタント”ですから、業界の事情を熟知しております」
IT担当 「えっと、質問いいですか?この事例と当社との類似点は、営業担当者の入れ替わりが激しく、教育・育成に課題があるところでしょうか?」
ダメシス 「その通りです。さらに、扱う商材の種類・複雑さや、営業1人当たりの担当顧客数などにも共通点があると思います」
IT担当 「なるほど。それでは事例企業と当社で異なる点についてはどうお考えですか?」
ダメシス 「異なる点・・・ですか?」
IT担当 「そうです。事例は常に参考になりますが、この企業と同じソリューションが当社にとって効果があるかどうかは別問題ですよね。異なる点はどの辺ですか?」
ダメシス 「そうですね・・・やはり、企業文化とかでしょうかね・・・」
IT担当 「いや、そんな抽象的なことを言われても。向こうの企業文化など分かりませんし。例えば、入れ替わりの激しい営業担当者について、当社の場合は全くの未経験者が入ってくることが多いのですが、この事例企業は同業他社からの経験者採用が多いようですね」
ダメシス 「あっ・・・そうかもしれませんね」
IT担当 「あと、商材の種類ですが、当社ではコア技術を使った商品ばかりですから、幅広い商品知識よりも深い技術知識が重要です。その点、この米国企業の事例ではどうですか?」
ダメシス 「えっ、そうですね・・・仕入れて売るだけの商品が中心ですから、ちょっと違いますかね」
IT担当 「あと、担当顧客の数ですが、当社では顧客が東京や大阪など大都市に集中しています。移動時間を気にする必要はあまりなく、帰社して色々と確認するのも容易です」
ダメシス 「えー・・・」
IT担当 「この事例はどうでしょうか?米国内を自動車で移動するので、移動時間が相当かかるのではないですか。本社への出社は週に1回ぐらいですか?」
ダメシス 「えー・・・あー・・・」
IT担当 「当社との違いが分からないのなら、出直して来てもらえますか?」
ダメシス 「・・・(ちっ、楽勝だと思ったのに面倒なことになったな)・・・」

ダメな理由:自己採点が甘い

 前回(第20回)は“システム屋”が言う「横展開」の問題点を指摘しました。

 横展開と同じぐらいの頻度で“システム屋”が画策するのが「上流シフト」です。コンサルティングと言い換えられることもあり、そこには自称・コンサルタントが登場します。冒頭のような自称・コンサルタントは、同業他社の事例をベストプラクティスと称して紹介したがります。ユーザー企業が2~3個突っ込んだ質問をすれば、たちまち化けの皮がはがれてしまいます。

 “システム屋”の成長ベクトルには「大規模シフト」「専門シフト」「上流シフト」の3方向があります。