岩井 毅/NTTコミュニケーションズ ドバイ事務所

 暑い---。ドバイに到着した私の最初の印象だ。前任地のワルシャワからドバイへ着いたのは2008年12月13日。その日、ワルシャワは零下10度、ドバイは30度とその気温差は約40度もあった。中東とは縁もゆかりもなかった私にとって、暑さに始まったその後のドバイでの体験は驚きの連続だった。

 いくつか例を挙げよう。(1)週末の曜日が異なる。日本では土日が週末だが、ドバイが属するアラブ首長国連邦(UAE)では金土となる(ちなみにオマーンやサウジアラビアでは木金が週末)。(2)ラマダン(断食月)の開始・終了日やほとんどの祝日が直前まで決まらない。UAE月観測委員会が月の満ち欠けを見てその都度決めるからだ。(3)ラマダン期間中は非イスラム教徒であっても日中は公衆の面前で口に物を入れることが禁止されている(水やタバコもだめ)。

 また、中東では住所に相当するものが存在せず、郵便物は私書箱に配達される。名刺にも「P.O.Box XXXXX, Dubai, U.A.E.」といった具合で実におおざっぱな記載が多く、最初の訪問では目的地にたどり着くまで苦労する。カーナビを購入してみたが、道路工事により道が頻繁に変わるため、ほとんど役に立たなかった。

突然のサービス停止予告に困惑

 このような状況の中、中東進出企業に向けたICTソリューションを日々提案しているところだが、2010年、そのICTの分野でも驚くべき出来事がいくつも起こった。中でも特筆すべきは、BlackBerryサービスの中止騒動だ。

 発端は、UAEの電気通信を管轄する「Telecommunications Regulatory Authority」(TRA)による2010年8月1日のアナウンス。内容は、2010年10月11日をもってBlackBerryのメッセンジャー、電子メール、Webブラウジングを停止させるというものだった。新聞などでは、BlackBerryの通信が暗号化されており、かつサーバーがUAE国外にあるため、UAE当局による規制が及ばず、国家安全保障上重大な問題があることが理由と報じられていた。このアナウンスには私もBlackBerryユーザーの一人として大変衝撃を受け、一時はiPhoneなどへの乗り換えも真剣に検討した。

 最終的には、サービス停止期限の3日前となる10月8日、サービス継続を許可するとTRAがアナウンスして事なきを得た。しかし、どのように決着したのかはいまだに謎である。ただ本件に関しては、私たちも多くの日系企業から問い合わせを受けた。

 このようにいつ何が起こるか分からない中東地域であるからこそ、常にアンテナを高く張り、規制が多い状況でも最適なサービスを提供できるよう、日々奮戦している次第である。

岩井 毅(いわい つよし)
NTTコミュニケーションズのドバイ事務所長。イギリス、ドイツ、ポーランドでの合計約7年の駐在を経てドバイに着任。ドバイの猛暑に辟易しつつも2009 年は日本人会ゴルフ部副部長としてゴルフを、2010年は日本人学校にて週末に子供と一緒にバスケットボールを楽しむ。一番の暑さ対策は、関西人に欠かせないお好み焼きとたこ焼き。