日本航空(JAL)は2011年1月4日、日本IBMと結んでいるアウトソーシング契約の範囲を縮小し、アプリケーションの開発・保守を自前に戻すことを発表した。1月以降はインフラの運用だけを日本IBMに委託し、開発・保守はJALグループで担う()。これに伴い、日本IBMが51%所有するJALインフォテック(JIT)の株式を2011年6月末にすべて買い戻す。JITはJALのシステムの開発・保守などを手掛ける従業員1000人強の会社である。

図●日本航空(JAL)のシステム開発・保守および運用体制
図●日本航空(JAL)のシステム開発・保守および運用体制
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 新契約は2011年1月から2014年6月までの3年6カ月だ。旧契約は2001年7月から2011年6月までの10年間だった。旧契約を結んでから1年後の2002年7月に、JALはJITを日本IBMに売却していた。

 JALは委託範囲を縮小する理由について、「当社の再生を確実なものにするため、システム部門を抜本的に立て直した上で自立化を図る」(JAL広報)と述べる。アプリケーションの開発・保守を自前に戻す狙いについては、「JITに直接発注することで、これまで日本IBMに支払っていた管理費を削減できるため、全体のコストを抑えられる」(同)と説明する。

 委託範囲は縮小するものの、開発・保守をJITが担うという役割分担については変更がない。そのため、「技術的な問題は発生しない」(JAL広報)。JITを買い戻す目的が自前回帰であるため、日本IBM以外のITベンダーにJITを譲渡して開発・保守のアウトソーシングを再開する可能性は、現時点ではないという。

 一方、インフラ運用の委託を継続するのは、「これまでに実施した品質向上や生産性向上に向けた取り組みの結果を評価している」(JAL広報)からだ。今後はさらに運用コストを下げるため、サーバー資源を使った分だけ提供してもらう日本IBMの「シェアード・ホスティング・サービス」などの利用を検討する。

 アウトソーシングの契約期間を3年6カ月とした理由については、「変化が激しいIT分野において、5年や10年といった長期的な契約に基づき発注を事前に確定するのはリスクが大きいと判断した」(JAL広報)とする。

 JALは全社で1万6000人の人員削減を進めている。ITについては、人を戻してコストを落とすという、人員削減とは反対の方針で立て直しに挑む。