2011年1月上旬、コンシューマ向けデジタル技術の総合展示会「2011 International CES」(CES2011)が開催される米ラスベガスに向かった。今回の取材のメインテーマは、Androidを中心としたモバイル機器の最新動向。米アップルの「iPhone」や「iPad」の登場と、その対抗軸としてのAndroid端末の台頭により、ここ数年、モバイルの主導権が米国に移りつつあることは多くの人が実感する通り。その最新事情を調べるためだ。

あちらこちらで目に入る「4G」の文字

 もちろん、Androidベースのモバイル機器は会場の至るところで見られたのだが、ラスベガスで予想外に待ち構えていたのは、米国における「4G」(*1)の高揚感である。空港を降り立ち街を歩くと、ホテルの壁面いっぱいに米スプリント・ネクステルの大きな広告が掲げられている(写真1)。展示会場に着けば、台湾の端末メーカーHTCによる「4G」の看板が目に飛び込んでくる(写真2)。

写真1●ホテルの壁面に掲げられたスプリント・ネクステルの広告
写真1●ホテルの壁面に掲げられたスプリント・ネクステルの広告
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写真2●CES2011展示会場のHTCの広告
写真2●CES2011展示会場のHTCの広告
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*1 第4世代移動体通信。米国では、実効速度で数Mビット/秒以上が期待できるモバイル・ブロードバンドを「4G」と呼んでいる。具体的には、「LTE」「HSPA+」「モバイルWiMAX」が対象。以前は、ITU(国際通信連合)で検討が進むIMT-Advancedが「4G」とみなされていたが、2010年12月、ITUはLTEやHSPA+、モバイルWiMAXという3Gの発展技術について「4Gと認める」と発表した。

 イベントが始まれば、自信にあふれた通信事業者トップの基調講演や記者会見の連続。「我々通信事業者が、モバイル・イノベーションの中核にいる。一緒に4Gのエコシステムを急拡大させよう」(米ベライゾン・コミュニケーションのローウェル・マクダムCOO)、「我々の4Gネットワークで最善のモバイル体験を提供する」(AT&T モビリティ&コンシューマ・マーケット部門のラルフ・デ・ラ・ベガ社長兼CEO)など、自らの取り組みをアピールしたり、聴衆を鼓舞したりするスピーチが続いた(写真3)。

 掛け声だけでなく、活動も具体的だ。各社とも、ここ数年で全米に「4G」のインフラを急ピッチで整備する。ベライゾンの例で言えば、既に同社のLTEネットワークの人口カバー率は30%に達しており、今後18カ月で2倍にするという。

 端末についても、2011年中には全事業者合計で数十台規模の「4G」端末が製品化される予定だ。ベライゾンは今年前半だけで10台の4G端末を、AT&Tは今年中に20台の4G端末を市場投入する計画であることを明らかにした(写真4)。少し前まで「モバイルの暗黒大陸」(慶應義塾大学大学院の夏野剛特別招聘教授)と呼ばれていたのが、嘘のような変身ぶりである。

 しかしながら、今の米国の4Gブームに日本勢の影はない。

写真3●4G推進を強調したベライゾンの基調講演
写真3●4G推進を強調したベライゾンの基調講演
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写真4●20種類の4G端末を提供することを明らかにしたAT&T
写真4●20種類の4G端末を提供することを明らかにしたAT&T
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