Hyper-V 2.0では、IntelのEPT、AMDのRVIといった「第二世代のハードウエアの仮想化支援機能」が利用可能となり、パフォーマンスが向上した。また、クラスタが組まれた二つ以上の物理マシン間で、仮想マシンをほぼダウンタイムなしで移動する「ライブマイグレーション」が利用できるようになった。 Hyper-V 1.0に比べて、運用面で大幅に機能強化されたといえる。

 前半ではHyper-V 2.0の新機能を概観した上で、目玉機能である「ライブマイグレーション(Live Migration)」の使用方法や注意点を解説する。後半ではパフォーマンスカウンタを使った性能測定方法に触れる。

Hyper-V 2.0の新機能

 Hyper-V 2.0における新機能を表1にまとめた。この中から、特徴的な新機能について解説する。

表1●Hyper-V 2.0における新機能
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表1●Hyper-V 2.0における新機能
(1)サポートするプロセッサ数の増加
  • 最大512コアまでの仮想プロセッサをサポート

 Hyper-V 2.0では一つの論理プロセッサに対して最大8個までの仮想プロセッサを割り当てることが可能となった。Hyper-Vがサポートする最大論理プロセッサ数は64コアであるため、仮想マシンでは最大64×8=512個の仮想プロセッサが利用可能となり、1台の物理マシンでより多くの仮想マシンを同時実行させることができるようになった。

(2)メモリーアクセス処理の性能向上
  • SLAT対応による性能向上

 Hyper-V 2.0からSLAT(Second Level Address Translation)が利用可能となった。SLATは、ゲストOSのページテーブルを物理コンピュータのページテーブルに変換する際、ハイパーバイザーではなくCPUで直接処理する。この仮想化支援機能を使うことで仮想マシンのパフォーマンスが向上する。なお、この機能を利用するには第二世代仮想化支援機能(Intel EPT、AMD RVI)を持ったCPUが必要である。

(3)ネットワーク機能の強化
  • Virtual Machine Queue(VMQ)

 Virtual Machine Queue(VMQ)とは、マシン上の物理NIC上に仮想マシン用の仮想キューを作成し、効率よく振り分ける機能である。これによりホストの負荷を低減させることが可能になる。特に仮想マシンの台数が増えた場合は効果的だ。なおVMQを利用するにはNDISドライバ6.2以上に対応したNICが必要である。

  • 仮想マシンでのTCPオフロードやジャンボフレーム対応

 NICでTCP/IPの処理を担当し、ホストのCPU負荷を抑えるTCPオフロードと、効率よく通信を行うためのジャンボフレームなどが仮想マシン上でも利用可能となった。

(4)ストレージの機能強化
  • 可変VHDの性能向上

 可変(仮想ディスク)の容量拡張処理の一部をオンメモリーで行うことにより、Hyper-V 1.0の固定VHDと同等の性能を確保できるようになった。また、Hyper-V 2.0における固定ディスクも性能が改善され、物理ディスク並みの性能を確保できるようになった。

  • 仮想SCSIディスクのホットプラグ対応

 実行中の仮想マシンに対してSCSI接続の仮想ディスクを追加する、ホットプラグが可能になった。これによってサービスを停止することなくディスク容量が拡張できるようになった。ただし、IDE接続の仮想ディスクはホットプラグに対応していない。

(5)運用管理上の機能強化
  • ライブマイグレーション

 Hyper-V 2.0において最もインパクトが大きい機能がライブマイグレーションである。ライブマイグレーションはクラスタ化された2台以上の物理マシン間で、ダウンタイムなしで仮想マシンを移動できる機能である。

  • クラスタ共有ボリューム(CSV)

 クラスタ共有ボリューム(CSV:Cluster Shared Volumes)は、Windows Server 2008 R2の新機能である。これを使うことにより、クラスタノードに所属する各物理マシンから共有ディスク内のLUNに対して同時かつ直接アクセスできるようになった。Hyper-V 1.0では、仮想マシン単位でLUNを作成する必要があり、管理上の手間が大きかった。CSVの登場によって、仮想マシン単位でLUNを作成する必要がなくなった。また、ライブマイグレーションもこの機能を利用することで実現可能となった。