「Android Bazaar and Conference 2011 Winter(ABC 2011 Winter)」が2011年1月9日、東京大学の本郷キャンパスで開催された。Androidの普及促進団体である日本Androidの会が主催するイベントである。事前登録者数は3500人を数え、当日は参加者とスタッフを会わせて2400人以上が集まった。44のセッションに加えライトニング・トークでは24組が発表、展示スペースのバザールには50グループが出展、Androidの広がり、進化、影響力の大きさを示すイベントとなった。

写真1●ABC2011Winterの模様。2400人以上が参加者した
写真1●ABC 2011 Winterの模様。2400人以上が参加者した
[画像のクリックで拡大表示]

基調・招待講演:世界と日本の今後に重要な意味を持つAndroid

 午前中は、東京大学の安田講堂を会場として、日本Androidの会の丸山不二夫会長による基調講演と、総務省情報通信国際戦略局情報通信政策課長 谷脇康彦氏による招待講演が行われた。世界の今後、日本の今後に、ワイヤレスネットワークとAndroidが大きな役割を果たすというビジョンを示す内容であった。

日本には強力なインフラ・産業・開発者がある---日本Androidの会 丸山会長

 日本Androidの会の丸山会長は「広がるAndroidの世界──メディアとコミュニケーションと日本の未来」と題し基調講演を行った。Androidに代表される個人所有の情報デバイスが、コンピューティングの主流となり、今まで登場した様々な形態のメディアの後継となっていくというビジョンを示した。

写真2●日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏。コンピュータのコモディティ化、コンシューマ向けコンピューティングの高度化が、メディアの統合に向かうとのビジョンを示した
写真2●日本Androidの会 会長 丸山不二夫氏。コンピュータのコモディティ化、コンシューマ向けコンピューティングの高度化が、メディアの統合に向かうとのビジョンを示した
[画像のクリックで拡大表示]

 丸山氏はこう語る。ハードウエアの劇的な価格対性能比の向上は、コンピュータの登場以外連綿と続いている。現在のスマートフォンの計算能力は1970年代初頭の超大型コンピュータや1970年代後半のスーパーコンピュータを凌ぐ。携帯電話の世界的な普及も急ピッチで進んでいる。やがて、地球人口の大半の人々が、スーパーコンピュータ並みの処理能力のデバイスを手にする時代、「50億人が(かつてスーパーコンピュータの代名詞であった)CRAYを持つ時代到来しようとしている」(丸山氏)。

 一方、クラウド・コンピューティングもまた、コンピュータの価格対性能比の劇的向上とコモディティ化を背景に登場した概念である。クラウド+スマートフォンという過剰なまでの計算処理能力がすでに存在し、しかもトータルの処理能力は増え続けている。「その処理能力がどこで消費されているかといえば、個人だ」(丸山氏)。動画コンテンツなど計算能力が必要な応用範囲がどんどん出てきている。

 企業内コンピューティングは個人向けに比べると保守的だが、やがて個人のコンピューティングに追いつかなければならない時代が来る。一方、タッチUI(ユーザーインタフェース)、音声認識、ゼスチャ認識など、新しいUIが登場しており、個人によるコンピューティングを支援する。「従来『マルチメディア』と呼ばれていたものは、クラウドデバイスの登場で(一本化された)ユニメディアに収れんしていく。メディア産業のすべてと、Androidとは接点を持つようになる」──このように、丸山氏が継続して主張しているメディア論とAndroidとを結びつけた。

 そして丸山氏は「日本には世界一のモバイルブロードバンドのインフラがあり、グローバルな規模を持つ家電産業があり、フィーチャー・フォン(従来型携帯電話)の10年の経験がある。グローバルな競争力を持ち得るコンテンツと、資金力のある携帯コンテンツプロバイダ、多数の経験のある携帯コンテンツ開発者が存在する。(会員数1万5000人の日本Androidの会という)強力なAndroidコミュニティがある」と、日本の強みを指摘。「Androidでグローバルな市場で勝負しよう。まずは1年以内に、現在世界2位であるAndroidマーケットへのアップロード数を、世界ナンバーワンにしよう」と呼びかけた。

写真3●丸山氏が示したスライドから。日本が置かれている条件と、Androidの勢いを組み合わせることで、競争力を向上させる
写真3●丸山氏が示したスライドから。日本が置かれている条件と、Androidの勢いを組み合わせることで、競争力を向上させる
[画像のクリックで拡大表示]