かつての企業ネットワークにおいては、少々の間メールが送受信できなかったりしても、それほど大騒ぎになることはなかった。しかし、今やネットワークやサーバーは「動いていて当たり前」と思われている時代だ。一瞬たりともそれらが動かないことは許されない。機会損失は言うまでもないことだが、日々の業務がネットワークやサーバーに大きく依存するようになってきているのだ。

 そこで、ネットワークやサーバーを2重化するなどして可用性を上げることが重要になってきた。このような対策を「冗長化」という。この特集を読むことで、重要性が増してきた冗長化技術について理解を深められるはずだ。なお「可用性」とは「システムやサービスが利用できる時間の割合」、つまり稼働率のことを指す。

レイヤー別に冗長化技術をまとめる

 一般的なネットワークにおける冗長化手法は、「機器の冗長化」と「経路の冗長化」に分けられる。機器の冗長化とは、サービスを提供するネットワーク機器やサーバーを複数台用意して運用すること。一方の経路の冗長化とは、通信の経路を複数用意して運用することだ。

 このように「機器の冗長化」と「経路の冗長化」という分け方もあるが、この特集では、「その冗長化技術を使う場所」と「レイヤー」という考え方で分類した。この分け方のほうがより実践的だからだ。

 に、企業ネットワークのどの場所でどういった冗長化技術が使われるかを示した。もちろん、冗長化技術はここで示したもの以外にもある。しかし、基本的な考え方はほぼ網羅している。これらを押さえておけば応用が利く。

図●この特集で扱う冗長化技術
図●この特集で扱う冗長化技術
第1回~第5回で扱う主な冗長化技術について、どこで使うものなのかを示した。ネットワーク構成としては一部省略している部分もある。
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 まず第1回と第2回では、LANで使われる冗長化技術、「STP」「リングプロトコル」「リンクアグリゲーション」を解説する。これらはレイヤー2レベルの主要な冗長化技術である。ここから学び始めることで、そのほかの冗長化技術を理解しやすくなる。

 第3回と第4回では、レイヤー3スイッチやルーターなどで使われる「VRRP」「スタック」「ルーティングプロトコル」というレイヤー3レベルの冗長化技術を紹介する。第1回で紹介したSTPと一緒に、VRRPを使う方法についても解説する。

 第5回はサーバーで使われる冗長化技術だ。サーバーはサーバー管理者によって冗長化がなされることが多いが、ここではネットワーク管理者が考えるべきサーバーの冗長化について解説した。「負荷分散装置」や「NICの冗長化」である。

 この特集を読み終わったときには、冗長化技術の基礎が理解できているはずだ。

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