筆者は政治評論家ではないので、政局について論じるのは本意ではない。しかし、政局の焦点が「脱小沢」にあり、国家ICTの議論をリードしているのが民主党情報通信議員連盟(以下、IT議連)、その会長が「原口はずし」の対象となった原口前総務相、さらに科学技術担当の「玄葉寄せ」がおこっているとなると、2010年5月に策定された「新たな情報通信技術戦略(以下、新IT戦略)」や、ICT関連予算を語る上で、政局を抜きには議論できない。

 平成23年度予算は、民主党が2009年の政権交代以来、初めて本格的に編成した予算だ。ICT関連では、「新成長戦略」に沿った形で新IT戦略が策定され、その工程表も閣議決定された(図1)。

図1●民主党政権でのICT関連動向
図1●民主党政権でのICT関連動向
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 ICT関連予算はその工程表に沿って編成された。その内容や動向はここまでの連載でご紹介した通りである。つまり、「玄葉寄せ」、「原口はずし」、総務省と経済産業省の戦い、である。

期待されていない官公庁ICTビジネス

 IDC Japanが、2010年12月に公表した主要産業別の対前年度成長率の推移予測を見ると、年の後半に政権交代が実現した2009年までは、他の産業と比較しても官公庁ビジネスはさほどの低下ではなかった。これは、リーマンショックで他の産業におけるICT投資が急激に冷え込む中で、自民党政権が特に最後の補正予算で大型のICT投資をするなどのテコ入れをした影響もある。

 しかし、2010年以降、他の主要産業のICT投資が回復する中で官公庁ビジネスは引き続き低迷すると予測されている(図2)。財政逼迫状況で、大きな投資が期待できないのが大きな要因とも言えるが、「原口ビジョン」や「情報通信八策」でICT投資倍増を掲げ、新IT戦略でもICTを経済成長の牽引役と位置付けていることは、大して評価されていないということでもある。

図2●主要産業の前年比成長率の推移予測
図2●主要産業の前年比成長率の推移予測
出所:IDC Japan「国内産業分野別IT市場における2010年上半期の分析と2010年~2014年の市場規模予測」2010年12月2日発表
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 それだけ、民主党政権へのICTに関する期待が薄いのであろう。ここまでの連載でご紹介したような状況は、この予測を裏付けているともいえる。