この1年でユーザーによる活用と製品の充実が進んだSSD。その導入に際して、IT部門はハードディスクをベースにしたストレージ装置との違いを理解しておく必要がある。(1)書き換え動作が徐々に劣化を引き起こす消耗品であること、(2)SSDの効果を引き出すチューニングや機器選定が必要になることである。

コントローラーと容量増で長寿命化

 実は初期のSSDは、使い方によっては3年程度でドライブとして寿命を迎えてしまう。ハードディスクのディスクを単にメモリー素子に置き換えると、物理的に同じデータを読み書きすることで、10万回程度の書き換えで該当素子が破損するからだ。予備のメモリー素子を使い果たせば寿命を迎える。しかし現行の企業向けSSDの保証期間は、IT機器の法定耐用年数である5年が相場だ。

図1●SSDの書き換え寿命を最大化する「ウェアレベリング」技術
図1●SSDの書き換え寿命を最大化する「ウェアレベリング」技術
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 5年の動作を保証できるのは、フラッシュメモリーの書き換え回数を使い切る「ウェアレベリング」と呼ぶ制御機能が企業向けSSDの定番機能となったためだ(図1)。

 ウェアレベリングとは、すべてのフラッシュメモリー素子に書き換え動作をまんべんなく実行する仕組みである。アプリケーションやOSが同じファイルを複数回更新したとしても、SSDコントローラーが劣化の少ないブロックに書き込みを分散させる。更新されないファイルを背後で移動させて、更新頻度の高いファイル用の空き領域にする作業も実施する。日立製作所 情報・通信システム社RAIDシステム事業部製品企画部の大枝高部長は「現在の企業向けSSDは、激しい読み書きが発生する現場で使えるだけの寿命がある」と言い切る。

SSDは寿命予測が可能

 SSDの信頼性はハードディスクよりも高い。大手メーカーに聞き取りした結果、MTBF(平均故障間隔)は、高速ハードディスクの160万時間に対して、機械部品がない企業向けSSDは200万時間である。そのうえSSDは、フラッシュメモリーの書き換え回数を基にした寿命予測が可能だ(図2)。

図2●寿命が分かるので計画交換が可能
図2●寿命が分かるので計画交換が可能
SSDでは、書き換え回数や予備領域の残数などを基に寿命を予測できる。モーターやヘッドを内蔵するHDDでは、機械部品の故障を予測するのは困難
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 一般に、ディスク装置の状態データは「S.M.A.R.T.」と呼ぶ標準インタフェースを通じて取得する。SSDでは書き換え回数や予備領域の残りなどの情報を、S.M.A.R.T.経由で取得できる。

 日本IBMシステムx事業部の早川哲郎システムズ&テクノロジー・エバンジェリストは「SSDは故障する時期を見通せる。機械部品を持つハードディスクにはない長所」と着目する。

 すでにSSDの寿命予測が可能な製品もある。例えば、NECインフロンティアが販売するSSD対応POS端末「TWINPOS」シリーズだ。

 コンビニエンスストアの店頭で、精算や商品の広告を表示する多機能端末を見たことがある読者は多いだろう。こうした人の出入りが激しい環境での24時間稼働が珍しくない現場では、POS端末が内蔵するハードディスクが障害の原因になるケースが多い。このためPOS端末の顧客には「ハードディスクを2年から3年で交換することを推奨している」(複数のPOS端末メーカー)。

 SSDであれば、5年超は無交換で利用できる。さらにS.M.A.R.T. 情報を基に保守を促す警告を出すことで、障害を回避できるようになった。「5年を超える安定稼働を実現したい」(NECインフロンティア POSマーケティング部の渡邊徳明エキスパート)というニーズに応える。

 同じくSSD搭載のPOS端末「TeamPoS」シリーズを販売する富士通フロンテックも、寿命予測が可能なSSDのメリットに注目している。「POS側のアプリケーションと保守サービスのインフラを活用したソリューション展開を考えている」(富士通フロンテック販売推進部第一販売推進部の伊藤聡一郎部長)とする。