IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

居酒屋で後輩に説教を垂れるダメな“システム屋”
ダメな“システム屋”の会話 ダメ先輩“システム屋” 「いいか、おまえらよく聞けよ。今日はいいことを教えてやる」
後輩一同 「はい」
ダメ先輩 「A事業もB事業もC事業も、実は全部オレが始めたものだ」
後輩一同 「(えっ?まあいいか・・・)はい」
ダメ先輩 「どうしてだか、分かるか?」
後輩一同 「はい?」
ダメ先輩 「あのな、人間には何種類かあってな。ゼロから1を生み出す人間、1を10にする人間、10を11にする人間などに分かれる。ゼロから1を生み出す人間はなかなかいない。オレはそれだ」
後輩一同 「はい」
ダメ先輩 「ゼロから1を生みだすのが一番難しい。“起業家精神”がないとできないんだよ。A事業はまだ赤字だが、おまえらは赤字が怖くて1を生みだすことができないだろう」
後輩一同 「は・・・い」
ダメ先輩 「だからダメなんだ。B事業はあと何年かは先行投資期間で利益は出ない。だが、長期で物事を考える器じゃないと、あれは生み出せなかったな」
後輩一同 「は・・・い」
ダメ先輩 「C事業は撤退したけどな、失敗は成功の元だ。あれで若手は育ったし、何と言っても失敗が怖くて何もできないよりははるかにいい」
後輩一同 「は・・・い」
ダメ先輩 「いいか、ゼロから1を生むのは発想力、構想力だ。理想を描けば、そこからアイデアが生まれる」
後輩一同 「は・・・い」
ダメ先輩 「お金は後から付いてくるから、1を10にするほかの連中に任せておけばいい。オレはとにかく無から有を生みだす。おまえらの仕事を作ってやるということだから、ま、感謝するんだな。だから、今日はおまえらのおごりな!!」
後輩一同 「は・・・あ?(この先輩のおかげで我々の給料が減っているというのに、さらにおごらせるのかよ・・・)」

ダメな理由:ゼロからマイナスが生まれる

 前回(第18回)は、仕事に満点はなく、失敗がつきものだという話をしました。それとは一見矛盾するようですが、失敗ばかりで成功がなければ、それはそれで問題です。ITベンダーやシステムインテグレーターの古参社員の中には、失敗ばかりで、しかもそれを自慢するという困った“システム屋”が生息していることがあります。

 ゼロからは1が生まれることはありますが、それどころかマイナス1が生まれることもあります。企業や組織の歴史を振り返れば「やらないほうが良かったこと」が必ずあるのではないでしょうか。「無駄な経験はない」と言う人がいるかもしれませんが、経営資源は有限です。それを選択したゆえに、別の何かに挑戦できなかった可能性だってあります。