データベースというと、Oracle Databaseをはじめとするリレーショナルデータベース管理システムを思い浮かべる人が多いでしょう。それが現在の情報システムの基盤であることは間違いないのですが、変化の兆しが見えてきています。

 現在のソフトウエア開発において、データベースとプログラミングは切っても切れない関係です。データを保存しないソフトウエアはまずありません。データはファイルに保存してもいいのですが、ファイルシステムが提供する機能はシンプルなものなので、開発の負担が増えます。また、開発者によってファイルの使い方が違ってくる可能性もあります。

 このような問題を解決してくれるのがデータベースでしょう。データベース管理システム(DBMS)を使うことで、より高度なソフトウエアを、より安定した形で作れます。企業の情報システムはもちろんのこと、携帯電話でも、ソフトウエアを組み込んだ各種電子機器でも、小規模なWebシステムでも、DBMSが広く使われています。

 企業情報システムのデータベースを考える場合、1990年代から現在に至るデータベースの主流と言える考え方は、図1の(a)の「データウエアハウス指向」と呼べるものでした。企業の中に一元化した巨大なデータベースを構築、管理し、個別システムのアプリケーションがそれを利用しようという考え方です。オラクルのOracle Database、マイクロソフトのSQL Server、IBMのDB2といったリレーショナルデータベース管理システム(Relational Database Management System、以下RDBMS)を使いますが、それらは高価なものなので、集約すれば導入コストを削減できると考えられました。また、企業にとってデータはとても大切なものなので、維持管理は不可欠です。集約すればその維持管理コストも削減できると考えられました。

図1●データベースを集約することでコストを削減したり、より戦略的にデータを活用しようという考えは「データウエアハウス指向」と呼べるだろう。でも実際には、部門システムがバラバラにデータベースを持ってしまうことも多かった
図1●データベースを集約することでコストを削減したり、より戦略的にデータを活用しようという考えは「データウエアハウス指向」と呼べるだろう。でも実際には、部門システムがバラバラにデータベースを持ってしまうことも多かった

 ただ実際には、図1(b)のように、部門システムがバラバラにデータベースを構築してしまうことが避けられませんでした。集約した大規模データベースを利用するにはシステム間の調整が必要で、それでは間に合わないケースが多かったからです。

 オープンソースのDBMSである「MySQL」や「PostgreSQL」が実力を付けてきたことも、図1(b)の状況を後押ししました。DBMS購入のコストがないのですから、集約のメリットが薄れます。Webシステムの普及も図1(b)の流れを後押ししました。Webシステムはどんなに小規模なものであっても複数ユーザーの存在を意識せざるを得ません。データを壊さないために、MySQLやPostgreSQLといったDBMSの支援が不可欠だったのです。

 情報の目的外使用を避けるべきという考え方が浸透してきたことも、データベース構築に微妙に影響しています。多くのデータをため込んで維持管理しても、それを有効活用できるとは限らなくなってきたのです。もしかしたら図1(b)のようなバラバラのデータベースでいいのではないか? それを是とする代わりに得られるメリットは何か? こうした発想が2010年のデータベースのトレンドと言えるでしょう。