NECは、中国市場でのITソリューション事業拡大のために、三つの強化策を打ち出す。現地の有力システムインテグレーション(SI)企業との提携・協業、実証実験やモデルケースの早期展開、中国市場に特化した商品の提供──である。

写真●北京市で行われたNECと東軟集団の合弁会社設立の記者発表
写真●北京市で行われたNECと東軟集団の合弁会社設立の記者発表
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 2010年には、特に現地企業との協業ビジネスで大きく前進が見られた。その代表例が、中国の大手システム開発会社である東軟集団(Neusoft)との合弁会社の設立である(写真)。

 NECとNeusoftが2010年10月に中国・大連市に設立した合弁会社「日電東軟信息技術」は、Neusoftのデータセンターを活用して、ワークフローや生産管理、CRM(顧客関係管理)などのアプリケーションをSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)形式で提供する。情報システム部門を自前で持たない中堅・中小企業をターゲットに提供し、早期に100億円事業に育てたい考えだ。

 NECは合弁会社で提供するクラウドサービスを、SaaSだけではなく、IaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)やPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)などラインアップを拡充させる方針。野村綜研(上海)諮詢(NRI上海)とともに参画する大連市の港湾基盤システム構築においても、クラウドサービスを提供する計画である。

 地元有力企業との協業により、新市場の開拓も進める。2010年5月には、医療分野専門のIT企業である重慶中聨信息産業(重慶中聯)との協業により、医療分野の情報システム事業への参入を表明した。重慶中聯と共同で電子カルテなどの機能を備える医療情報パッケージソフトを開発。主に大規模病院をターゲットに販売し、既に重慶第二人民病院から受注した。

 大型商談での受注も相次ぐ。2010年6月には広州・白雲国際空港内の約300の小売店にPOSシステムを納入したほか、11月にはホテル・ニッコー無錫にホテルの基幹業務システムとIP電話システムを納入した。

 NECは2012年度の中国におけるIT関連事業の売上高の目標を1000億円としている。「中国のSI企業のトップ5入りを目指す」とNEC信息系統(中国)の木戸脇雅生総裁は 意気込む。