富士通は、ハード/ソフトを一体で提供できる垂直統合型の強みを生かし、大規模インフラ案件の獲得を目指している。中国では高速道路や空港、病院といった社会インフラの整備が急ピッチで進む。社会インフラの整備に付随して生まれるシステム構築の需要を取り込み、中国事業の拡大につなげる狙いだ。

 中国版スマートシティ計画「物聯網(ウーレンワン)」。RFID(無線ICタグ)や加速度センサーといった情報端末から収集した情報を活用し、効率的な社会の実現を掲げた中国の国家戦略だ。中国の政府系調査会社の試算では、物聯網関連の市場規模は、2020年に60兆円に達するといわれる。

 この巨大市場に食い込もうと積極的に動くのが富士通だ。現在は、地方政府や地場のITベンダーと組み、物聯網に関連する実証実験に取り組んでいる。直近では、江蘇省無錫市における橋梁の経年劣化を管理する実証実験がある。具体的には、橋梁の各部にセンサーを取り付け、車両の荷重などから、橋梁の経年劣化の度合いを分析するシステムを開発、稼働させた。

 「現在、江蘇省の一部地域にある大型橋梁に、実証実験で活用したシステムを導入する計画を進めている」。伊藤均新規ビジネス開発本部中国室長はこう明かす。江蘇省の案件以外にも、複数の地方政府と組み、10弱の実証実験を同時並行で進めているという。

 物聯網において中国政府が外資系企業に協力を求めるのは、データを収集するための情報端末や、収集したデータを分析・加工するためのアプリケーションの二つの領域だ。富士通はこれらを一体で提供できるという強みがある。

 「実証実験への参加を通じて、プロジェクトの実施主体である地方政府と良好な関係を築くと同時に、富士通の技術力を知ってもらうことで、将来の布石にする」(伊藤室長)。