富士通、NEC、日立製作所、NTTデータがそろって、欧米やアジアで活躍する「グローバル人材」の育成強化に乗り出す。懸案の海外事業を拡大するには、現地でビジネスをけん引できる社員の増員が不可欠と考えている。

 4社は社員を海外に送り込み、ビジネスの最前線で経験を積ませたり、現地事情について学ばせたりする()。こうした研修は従来からあったが、育成対象者を大幅に増やし、内容を拡充する。

表●日本の大手ベンダーのグローバル人材育成策と海外事業の規模
表●日本の大手ベンダーのグローバル人材育成策と海外事業の規模
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 日立は2011年4月からの1年間に、情報・通信システム社だけで育成対象者を前期比4倍超の約260人に増やす。30代前半までの若手社員を米国や中国などの研修施設に1~2カ月間派遣し、現地企業の訪問や語学研修などを経験させる。さらに、90人程度をインドやフィリピンのITベンダーに送り込み、現地の技術者とチームを組んでシステム開発などを経験させる。「内向き志向の強い若手の意識改革を促す」(日立の中村智人事総務本部長)。

 NECは2011年4月にも、30代の若手幹部候補を中国の大連に向かわせる。訪問先は、現地の大手システム開発会社、東軟集団(Neusoft)と合弁で設立した「日電東軟信息技術」。最長で2年間、現地ビジネスを経験させる。NECは米国や欧州などにも、現地ベンダーと合弁でクラウド事業を手掛ける会社を設立する予定であり、そこにも若手を派遣する。

 富士通は30代前半までの若手社員を欧州などの海外現地法人に送り込む。海外におけるIT関連事業の売上高が、国産ベンダーで唯一1兆円を超える同社は、既存の事業基盤を研修にも生かす。

 外国人社員の育成に注力するのがNTTデータだ。同社は、米国や中国などで働く40代前後の現地社員を対象にした海外での集合研修の対象人数を、15人から30人に増やす。

 IT調査会社の米IDCによれば、世界のIT市場は2011年に5.6%のプラス成長を達成する見込みだ。これに対して日本は0.4%の成長にとどまる見通し。海外事業の強化を急ぐ国産ベンダーにとって、グローバル人材の育成は待ったなしである。