日本の大手ITベンダーが、中国市場で大型システム案件を相次いで受注している。なかでも中国政府が本腰を入れる「物聯網(ウーレンワン)」と呼ぶ国家戦略にかかわる案件が目立つ()。物聯網とは、RFID(無線ICタグ)やセンサー技術を使ったスマートシティ計画だ。

 物聯網関連の案件の一つが、遼寧省大連市の港湾基盤システム構築プロジェクトである。このプロジェクトで、NECは野村総合研究所(NRI)の中国現地法人および大連の港湾事業者である大連港集団と共同で、センサー技術とRFIDを活用した温度トレーサビリティシステムや物流管理システムなどを構築する。NECとNRIは、2011年4月から本格的にシステム構築を開始する。

表●日本の大手ITベンダーが2010年に中国市場で受注した主な案件と同市場での事業強化策
表●日本の大手ITベンダーが2010年に中国市場で受注した主な案件と同市場での事業強化策
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 日立製作所も、大型計画への参画を決めた。中国政府とシンガポ ール政府が天津市郊外に開発する「中新天津生態城(中国・シンガポ ール天津エコシティ)」だ。この計画では、CO2排出量削減などの環境対策が目玉となる。日立はITを活用したエネルギー管理システムを構築する。これに伴い、10月1日付で中国現地法人の日立(中国)にスマートシティ事業特化の組織を設立した。

 富士通も物聯網関連の案件を中国市場での注力事業と位置付け、各地での実証実験に参画する。2010年6月から江蘇省無錫市の行政区が実施する、センサー技術を使った橋梁の経年劣化を管理するシステムの実証実験に取り組んでいる。このシステムは、橋梁に取り付けたセンサーを活用して、通行する車両の荷重などのデータを収集・分析し、橋の劣化状態を管理するものだ。富士通は複数の地方政府での実証実験を通じて、物聯網に関連した大型案件の受注を目指す。

 NTTデータは、物聯網関連での目立った動きはないものの、金融機関から複数の案件を獲得している。2010年2月に北京宇信易誠科技(ユーチェンテクノロジーズ)と天津市に設立した合弁会社を通じて、都市商業銀行や山東省の地方銀行などからインターネット・バンキング・システムを受注した。