IT業界でプロとして活躍するには何が必要か。ダメな“システム屋”にならないためにはどうするべきか。“システム屋”歴30年を自任する筆者が経験者の立場から、ダメな“システム屋”の行動様式を辛口で指摘しつつ、そこからの脱却法を分かりやすく解説する。(毎週月曜日更新、編集:日経情報ストラテジー

昇進を議論する役員会において
ダメな“システム屋”の会話 “システム屋”の役員A 「以上の理由で“プリンス君”を役員に推挙します」
役員B 「私は賛成ですな。当社創業以来最年少の役員昇格ということになりますが、彼なら申し分ありません。優秀を絵に描いたような人物ですから」
役員C 「私も賛成ですが、1つエピソードを申し上げたい。一昨年、一緒に米国出張にいった時ですが、彼は英語ができるだけではない。米国人とビジネスができると言うべきなんでしょう。何やらジョークもシャレていて、みんなで笑っているんですよ。ま、私を除いて」
役員A 「私の部門で在籍中の3年間、彼の評価はすべて満点です」
役員B 「その前は私のところにいましたが、その数年間もほとんど満点でした」
役員C 「ま、そのあたりがプリンスと呼ばれるゆえんでしょう」
社長 「ちょっと待った。質問していいかな。最年少といえども彼も入社してから20年はたつ。20年間で一度も失敗したというか、うまく行かなかったことはないのかな?」
役員A 「どうでしょう、聞いたことがありません」
役員B 「私も聞きません。傷がないということではないでしょうか」
役員C 「その辺がプリンスらしいのではないでしょうか」
社長 「去年の大トラブルは、彼のところで起きたんじゃないのか?」
役員A 「いや、あれは彼の部下の単独ミスです」
社長 「4年前にお客様ともめたとき、彼は何を担当していたのかな?」
役員B 「社長!あの時、状況報告書を作っていたのがまさに彼だったのです。簡潔で的確な文章だったと思いますよ。役員会議で回った文書も彼が作ったものでした」
社長 「ではあの時、お客様に怒鳴られながら調整していたのは?」
役員C 「それは、彼の部下の山田君あたりだったんじゃないでしょうか。山田君は頭を下げるのが得意ですから」
社長 「そうか。それでは質問を変えるが、我が社のプリンスに人望はあるかな?」
役員A 「この通り、役員がみな彼を推薦していますから、ありますよ、それは」
社長 「いや、人望だぞ。たとえば同期や若手からの人望だよ。システムの仕事はいわばトラブルの連続だ。失敗があったときの行動で、その人物の器が分かると言っても過言ではなかろう。それなのに20年間トラブルがないというのはどういうことなんだろう。まさか、悪いことは周囲の落ち度にしてきたのではないか?」
役員A 「そんなことはないです。彼はそんなやつではないですよ」
社長 「いや違う!周囲のせいにしてきたのは君たちなんじゃないのか!!このダメ役員どもが!!!」
役員A&B&C 「・・・(無言)・・・」

ダメな理由:“システム屋”の仕事に満点はない

 前回(第18回)とは角度を変えて、今回は経営陣・幹部の人事について述べます。

 仕事に失敗はつきものです。すべてが満点ならば、その人ばかりか会社が成功の連続であるはずですが、そんな会社は見たことがありません。

 “システム屋”が担う情報システム構築のプロジェクトならば、納期OK、品質OK、収益OK、顧客満足も人材育成も新技術挑戦もすべてがOKで満点とするならば、私は「満点プロジェクト」というものを見たことも聞いたこともありません。納期については一部の稼働を延期したものの、顧客満足では問題なく、また人材が急成長した、というプロジェクトであれば、何度か見たり経験したことがあります。