by Gartner
ダリー・プラマー マネージングVP兼ガートナー・フェロー
松原 榮一 リサーチ部門VP

 2011年以降、ITを取り巻く状況はどのように変化するのか。ガートナーによる予測を紹介しよう。

2015年までに、サイバー攻撃によって先進国の社会インフラが危機に陥る事件が発生する

 テロリストがサイバー攻撃によって、金融システムや発電所、携帯電話網などの多様なシステムを攻撃する事態が発生する恐れがある。このような攻撃は、2001年9月11日に発生した米国同時多発テロ事件に匹敵するダメージを、社会に与える可能性がある。

2015年までに、グローバル企業のCIOは「ITによる増収効果」によって評価されるようになる

 現在注目を集めているIT関連の取り組み、「コンテキスト・アウェア・コンピューティング」や「ビジネスイノベーションに対するITの直接的な貢献」「パターン・ベース・ストラテジー」「ソーシャル・ネットワーク・パワーの活用」はいずれも、コスト削減ではなく売り上げの増加を目指すものだ。経営陣は現在、IT部門に対して「ITを活用した増収」を求めている。グローバル企業のCIO(最高情報責任者)の業績は、増収効果によって評価されるようになる。

2015年までに、クラウドコンピューティングが提供する高度なツールや自動運用機能によって、ITサービス産業における労働時間が25%削減する

 製造業において職人の仕事が機械に取って代わられたように、ITサービス産業における労働者の仕事も、クラウドが提供する高度なツ ールや自動運用機能に取って代わられる。クラウドでは、エンドユーザーがセルフサービス方式のツ ールを使ってシステム管理ができるし、プロビジョニングやシステム監視などは自動化されている。至れり尽くせりのカスタマイズサービスは、標準的な自動化サービスに置き換えられる。

2015年までに、ITが本業ではないグローバル500企業の20%が「クラウド・サービス・プロバイダー」になる

 ITが本業ではない企業が、自社のサービスを、クラウドを通じて提供し始めている。クラウドを使ってサービスを提供することの重要性に気付いた大企業は、他社が運用するクラウドを使うのではなく、自社でクラウドを運用しなければならないと考えるようになる。この結果、売上高世界ランキングの上位500社に入る企業の20%が、自らがクラウドを運用してサービスを提供する「クラウド・サービス・プロバイダー」になる。

2014年までに、90%の企業が業務アプリケーションを個人所有デバイスで利用可能にする

 個人が所有するノートパソコンやスマートフォンで業務アプリケーションを利用可能にする企業は年々増加しており、2014年までに主流になる。

2015年までに、オンライン上の友だちの10%が人間以外の「ボット」になる

 「Twitter」や「Facebook」のようなソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使って情報を発信しようとする企業が増えている。SNSで情報発信をする「ボット(ロボットの略)」は、2015年までにより高度化し、他のユーザーに対して適切な返答をしたり、ユーザーごとに適切な情報を届けたりするようになるだろう。