アクセンチュアで小売業をクライアントに持ち、業務改革や情報システム構築のプロジェクトを15年手がけた長谷川秀樹さん。コンサルタントの立場ではなく、自ら大改革を推進したいと考え、東急ハンズに転職した。ご存じのようにハンズといえば、幅広く異色の品ぞろえが特徴だ。

 消費者からは各店舗のマーチャンダイジングやカテゴリーマスターなどが本社の企画で統一されているように見えるが、実は、それらは各店舗でバラバラだった。情報システムも個店別に運用されていた。個店主義はいいことだが、全体で見ると、重複する業務がある。ならば非効率なところを効率化していこう。中期経営計画の一貫で、新社長率いる「事業再構築」プロジェクトが始まった。業務フローを大幅に見直し、仕入れや在庫管理を変えるシステムを構築した。

思想に垣根がなく、使えるもは何でも使う

 現状を誰よりも知っている現場責任者たちを前に長谷川さんはアクセンチュア時代の悪夢が脳裏をよぎる。現状と違う業務を遂行しようとすると必ず、総論賛成、各論反対になる。外部コンサルタントとして、改革を提言しても“様々な理由”で改革に至らないことがあった。しかし、今回は当事者であるCIO(最高情報責任者)。調整と説得も自分の役回りであることがアドバンテージになった。長谷川さんは、営業を担当する執行役員や部長クラスを週1回集め、ガンガン話し合うスタイルをとった。改善であれば業務レベルの主任でいいが、大きな改革となれば上も下も巻き込み、意思決定者をプレーイングマネジャーにすることで、各論反対を覆すことができた。

 長谷川さんの興味は業務改革にとどまらない。実際の店舗で、ネットサーフィンのようなことができないかと考える。ハンズ以外の企業とも協業し、お客様に付加価値を提供することでシナジーを出して小売り業界が盛り上がるほうがいいと考える。クリスマスに、iPhoneでディスプレーのクリスマスツリーの中にメッセージを送る計画もある。販売中の製品をユーチューブやツイッターで即座に販促していたことも。使えるものは何でも使う。自身の思想に垣根がない長谷川さんは、ハンズの文化と自分の嗜好が合っていると笑う。

石黒不二代(いしぐろ ふじよ)氏
ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO
 シリコンバレーでコンサルティング会社を経営後、1999年にネットイヤーグループに参画。事業戦略とマーケティングの専門性を生かしネットイヤーグループの成長を支える。日米のベンチャーキャピタルなどに広い人脈を持つ。スタンフォード大学MBA