大手ベンダーが描いていたクラウド構想。その具体的な製品やサービスが続々と登場する──。2011年はこんな年になりそうだ。クラウドサービスに加え、クラウドサービスにアクセスするための端末や高速無線通信サービスなど、クラウドの利用環境も急速に整う()。

図●2011年に出荷・提供開始が予定されている、注目すべき製品・サービス
図●2011年に出荷・提供開始が予定されている、注目すべき製品・サービス
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外資は新製品、国産は付加価値

 今年は、オラクル、IBM、マイクロソフト、SAPといった外資系企業が、新たなクラウドサービスを提供し始める。2011年3月までにオラクルは、ERP(統合基幹業務システム)やCRM(顧客関係管理)システムなどを含む「Oracle Fusion Applications」を出荷する予定だ。これまでに買収した、シーベル、ピープルソフトなどの業務ソフトの機能を統合した新製品である。開発意向を表明したのは2005年で、製品化まで5年半かかった。オラクルは「自社導入とSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)の両方で使える」と説明する。

 これまでプライベートクラウドの導入に注力してきたIBMは、仮想デスクトップ、開発・テスト環境などの分野でパブリッククラウドサービスを開始。2011年3月から日本で利用可能にする。「プライベートクラウドは2010年で普及のめどがついた。次はパブリッククラウドに力を入れる」(日本IBMの橋本孝之社長)。

 マイクロソフトは2011年中に、グループウエアのSaaSとオフィス製品を月額料金で使える「Office 365」を提供する。SAPは早ければ2011年中に中堅・中小企業向けERPのSaaSである「SAP Business ByDesign」を日本市場に投入する。

 新規のサービスを提供する外資系企業に対して、国内企業は現在提供中のクラウドサービスの付加価値を高める。2011年をクラウド拡販の年にしたい考えだ。富士通は2011年1月からIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の「オンデマンド仮想システムサービス」でシマンテックのウイルス対策製品を用意。追加費用なく利用できるようにする。

 NECは中国の東軟集団(Neusoft)と共同でクラウドサービス事業会社を設立。2011年1月からサービスを開始する。中国進出した日本企業に対し、現地での素早いサポートを武器に拡販を急ぐ。

Android端末は混戦模様

 端末では、グーグルが開発したOSであるAndroidの搭載機に注目だ。2011年は新規参入のメーカーが続々と製品を出荷する。

 通信機器を主力製品とするシスコシステムズ、PCメーカーのエイサーがAndroidを搭載したタブレットPCを投入する。シスコは2011年3月までに国内で、エイサーは今春に海外で出荷を開始する。

 国産勢では、NECカシオモバイルコミュニケーションズとパナソニックモバイルコミュニケーションズの2社が上半期中にAndroidスマートフォンを出荷する。これにより、国内の主要な携帯電話メーカーからAndroidスマートフォンが出そろう。

 高速の無線通信サービスも2011年に普及が進むだろう。無線通信が高速になることで、Androidなどの端末をどこにいても使えるようになり、クラウドのメリットを生かしやすくなる。

 ソフトバンクモバイルは2011年2月以降に、下りで最大42Mビット/秒(bps)の無線通信サービス「ULTRA SPEED」を開始する。DC-HSDPAと呼ぶ通信帯域を拡大する技術により実現する。

 すでにDC-HSDPAを使った通信サービスは2010年12月にイー・モバイルが開始。NTTドコモはLTEと呼ぶ高速通信規格を使い、下り最大75Mbpsの「Xi」を2010年12月に始めている。

 ストレージ分野では、日立製作所が2011年2月に、新しいファイルストレージ製品を国内で出荷開始する。製品名は「Hitachi Content Platform(HCP)」。各部門や拠点に配置したファイルストレージのデータをWAN経由で自動的に集約しバックアップする機能を持つ。