様々な場面で情報活用への期待が高まっている。この状況を下支えしているのがストレージだ。ストレージの進化なしに、現在の、そしてこれからのIT環境は存在し得ない。第1回から第5回にかけて、“情報爆発”に耐えられるストレージ環境のあり方を探ってきた。今回は、インタフェースの将来像として、適正な帯域などについて考えてみよう。

 現在、ストレージインタフェースの主流は、EthernetやFibre Channelである。商用での最大速度は、Ethernetは10Gビット/秒、Fibre Channelの場合は16Gビット/秒だ。しかし、現場で実稼動しているインタフェースを見ると、Ethernetは1Gビット/秒が、Fibre Channelは4Gビット/秒がまだまだ主流になっている。特にFibre Channelにおいては、2Gビット/秒で構成されたシステムも、かなりの数が現役で動作している。

世代交代は緩やかにしか進んでいない

 このように、最速のインタフェースが製品化されても、市場のスタンダードは一世代か二世代前のものであり、世代交代はかなり緩やかにしか進んでいないことになる。インタフェースは速いにこしたことはないが、以下の大きく三つの理由によってI/Oスタンダードの世代交代は急速には進まないのが現状である。

理由1=コストの問題:最速のインタフェースカード、スイッチは既存の製品より確実に高額になる

理由2=メーカー対応のタイムラグの問題:関連メーカーのすべてが同時期に最速のインタフェースに対応するわけではない。HBAとNIC、スイッチ、ストレージを提供する全メーカーが最速のインタフェースを標準搭載するまでには相応の時間が必要になる。この間に、そのインタフェースを選択しようとすると、既に対応しているメーカーや製品のみが選択肢になってしまう

理由3=成熟度の問題:最新・最速のインタフェースを使用することによる他への影響範囲を予測するのは難しい。ストレージもITリソースの一部である以上、常にこの問題がつきまとう

ほとんどのシステムは帯域問題を抱えていない

 これら以外に、「ほとんどのシステムが、ストレージI/Oの帯域に問題を抱えていない」という事実がある。言い換えれば、「ほとんどのシステムが、ストレージI/Oの帯域を使い切っていない」ということだ。このことが、ストレージのインタフェースが最速なものへと急速に移行しない最大の理由かもしれない。

 仮に帯域が圧迫され性能問題が顕在化していれば、コストの問題があっても、より高速なインタフェースに速やかに切り替わっていくはずだ。だが、現状で帯域に対する問題を感じていなければ、上に挙げた三つの理由を無視してまで、最新のインタフェースを使う理由はどこにもない。結果、しばらくの間は既存インタフェースの継続利用を選択することになる。

 ストレージI/Oの帯域を十分に使いきっていない理由の一つには、そもそもサーバーからのI/O要求は、思っているほどに多くはないことが挙げられる。特に、例えばスケジュール管理やメッセージングなど、利用者による端末操作によってしかI/Oリクエストが発生しないシステムの場合、瞬間風速としてのI/O量は想像以上に少ないケースがほとんどだ。人間の入力操作の時間のほうが圧倒的に長いからである。