WBSのタスク、チーム課題の解消、議事録作成などの雑務。プロジェクトメンバーには、さまざまな作業が次々と割り当てられる。それらの作業一つひとつを期限までにやり終えるには工夫が不可欠だ。ITエンジニアが現場で実践している仕事術を紹介する。
WBSのタスクに加えて、プロジェクトの課題管理表からいくつかのチーム課題をアサインされたり、成果物の1次レビュー、議事録の作成などの雑務が次々と割り当てられる。こういう状況にあるITエンジニアにとって、個人に割り振られた作業のすべてを期間内に終わらせるのは容易ではない。作業が多すぎて適切にスケジューリングができなくなったり、期限の間際に割り込み作業が入って追い込みが利かなくなったりして、進捗遅れを起こした経験は誰しもあるだろう。
一方で、あなたの周りに、一つひとつの作業を確実にさばき、進捗を守るITエンジニアがいないだろうか。そういうITエンジニアが進捗遅れを起こさないのは、スキルが高いのでスケジュールに余裕が生まれるから、というわけではない。スキルが高ければ、それだけ多くの作業がアサインされるものだ。
進捗遅れを起こさないITエンジニアは、(1)作業が多くなった場合でも適切にスケジューリング(所要期間の見積もり、優先順位付け)を行い、(2)期限の間際に割り込み作業が入っても困らないように前倒しで作業を進める。以降で、これら(1)(2)の目的ごとに、進捗遅れを起こさないITエンジニアが実践している工夫を見ていこう。
すぐに少しだけ手を付ける
まず、(1)作業が多くなった場合でも適切にスケジューリングを行うにはどうしたらよいか。プリベクトの北山一真氏は、プロジェクトで難しそうな作業をアサインされたら、10分、20分といった空き時間を見つけ、すぐに少しだけでも手を付けるという。
手を付ければ作業完了までのイメージがはっきりするので、小さな作業に分解し、関係者やリスク、所要時間をできるだけ明確化する。いわば段取りを考えるわけだ。これを最初に実施しておくことで、適切にスケジューリングしやすくなる(図1)。
例えば「新システムのユーザー教育計画書の作成」というタスクを担当することになったときは、すぐに短い時間を確保し、「目的の明確化」「対象者の洗い出し」という具合にタスクを分解し、それぞれの関係者(ヒアリング対象者など)やリスク、所要時間を考える。こうした段取りを済ませておくと、「自分の作業だけでなく関係者の作業も考慮して、いつごろから始める必要があるのか分かるので、進捗遅れがなくなった」(北山氏)という。
作業を書き出し「見える化」する
そうして一つひとつの作業について段取りを済ませたら、あとは自分の担当作業をすべて洗い出し、ToDo(やること)リストを作ったり、カレンダーに予定として割り当てたりして「見える化」することが重要だ。当たり前のように思えるかもしれないが、実際にやってみると手間暇がかかり、続かないことがある。そのため、できるだけシンプルに行うことがポイントになる。
2人のITエンジニアによる実践例を紹介しよう。双日システムズの宮山敦史氏(SGソリューション部 技師)は、個人の作業管理表を作成し、そこに自分が担当するWBSのタスクとチーム課題をまとめて記している(図2上)。
作業管理表の項目は、チームのタスク管理表と同じで、タスクID、タスク名、開始予定日(実績日)、終了予定日(実績日)、進捗率というオーソドックスなもの。そのためチームのタスク管理表からコピーするだけで済む。これに、「伝票番号採番モジュールの不具合修正」「エラーメッセージ文言の見直し」といった、自分が担当するチーム課題を記入し、開始予定日(実績日)、終了予定日(実績日)、進捗率を更新していく。
WBSのタスクとチーム課題以外の雑務は、作業管理表ではなく付箋紙に書き出し、原則としてその日のうちに片付ける。雑務の大半は重要度・緊急度が低いのに、なぜすぐ片付けるのか。それは、「数が多いので、ため込むとスケジューリングが煩雑になる上に、精神的なストレスの原因になる」(宮山氏)という理由からである。こうして、作業管理表の更新の手間を減らしているのだ。
作業管理表に載っているのは重要な作業だけなので、終了予定日順にソートすれば優先順位付けができる。そうして、すべての作業を期限までに終えられそうかどうかを把握する。
加えて宮山氏はプロジェクトマネジャーから新しい作業をアサインされるたびに、この個人の作業管理表を見せて自分の状況を伝える。「どれだけ厳しい状況であるかが明確に分かるので、プロジェクトマネジャーがその場で作業の期限やアサインを調整してくれるようになった」(宮山氏)。